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遺産吉田修平法律事務所 弁護士 吉田 修平「遺産の評価」

遺産の分割を行うときには、遺産の評価が大変重要な問題になります。
遺産が現金や預貯金だけであれば、評価の問題は生じないのですが、遺産の中に、とくに不動産が含まれているときは、その評価が問題になります。
遺産である不動産(土地、建物)を評価する際に、最も厳格な評価をする場合には、裁判所で鑑定をすることになります。裁判官が不動産鑑定士を指名して、裁判の資料とするための鑑定をしてもらうのです。この場合には、鑑定費用として数十万円から100万円を超える金額がかかることがあります。
また、遺産分割を行うそれぞれの当事者が、私的に不動産鑑定士に鑑定を依頼することもあります(私的鑑定)。費用は裁判鑑定の場合と同様です。上記の裁判鑑定に至る前に、それぞれの当事者が任意に不動産鑑定士に依頼をして鑑定をしてもらうことも実務ではよくあります。
更に、それよりも勘弁な方法としては、不動産業者に不動産の査定をしてもらうこともあります。ただし、査定額は不動産業者によりかなり違ってくることもありますので、この査定額は、あくまで参考資料の1つにとどまるケースが多いものと思われます。
また、以上のほかに、公的な機関から出されているいくつかの評価の基準があるので、実務においては、これらの公的な評価を参考にすることもよくあります。
実務でよく用いられるのは、固定資産評価額と相続税評価額(相続税路線価)です。
前者は、固定資産税を賦課するための基準となる評価額のことで、土地と建物についての評価額があります。誰でも調べることができるのではなく、土地や建物の所有者や相続人がそれを知ることが可能になります。
土地については、固定資産評価額は時価の7割程度に相当すると言われているため、固定資産評価額を0.7で割戻しした金額を時価として考える方法が実務では取られることがあります。
後者の相続税路線価は、国税庁が相続税等の賦課をする基準として、各道路に接している土地についての相続税を付加するときの基準になる金額を公表しており、誰でも調べることができます。
相続税路線価は時価の8割に相当すると言われているため、相続税路線価を0.8で割戻しした金額を時価として考える方法が実務では取られることがあります。
上記のような様々な評価の方法を選択して、遺産分割を行う当事者は話合いを続けていきます。
最初は公的な機関から出された評価額を参考にして話合い、さらに不動産業者の査定を取ったり、不動産鑑定士の私的鑑定を取ったりして交渉を続け、それでも解決しない場合には、裁判所に遺産分割の調停を申し立て、その手続の中で裁判鑑定を行うことがあるということになります。
要するに、遺産分割のどの時点でどのような評価を行うかについて、コストなども考えた上で、それぞれの時点で最も適切な評価方法を採用していくのが、遺産である不動産の評価の実務における一般論ということになります。







