遺贈の活用事例
日本財団夢の奨学金日本財団 夢の奨学金
若者の未来が、不当に閉ざされることのないように
社会的養護という言葉をご存知でしょうか。親の死や病意、経済的理由などさまざまな事情で、産みの親のもとではなく、児童養護施設や里親家庭で子どもを育てていく社会制度のことです。
「日本財団夢の奨学金」はこうした社会的養護で暮らした経験のある若者が、未来を閉ざされないように支援するための事業です。というのも、社会的養護で暮らした経験のある若者の高等教育への進学率は全体平均よりも低く、中退率も高いという現実があるからです。経済的理由やサポートする大人が身近にいないことがその原因だといわれます。
そこで、専修学校や大学の入学金、卒業までの授業料全額、生活費、住居費などを給付するだけでなく、ソーシャルワーカーが進学や就職をサポートする伴走型支援しています。2020年度は7人の方々からの遺贈や相続財産寄付が原資でした。
事業は16年からスタートして47人(20年12月時点)が奨学生として在籍しています。第5期生となる20年度は、新たに13人が奨学生となり、6期(21年度)は10人を予定しています。毎年、多くの若者からの応募があります。でも、原資には限りがあります。「もっとたくさんの若者に届けたいのに」と思いながら、身を切る思いで選考しています。
21年4月から調理師として働く奨学生は卒業にあたり、こう振り返ってくれました。
「この2年間、楽しい事も辛い事もたくさんありましたが、この夢の奨学金や周りの支えのおかげで頑張ることができました。勉強も遊びも充実した生活が送れたのは奨学金のおかげだと思います。これからも自分の夢の実現のために日々努力し、頑張りたいと思います」
一般的な奨学金と異なり、社会人でも利用できるのも特徴です。ある奨学生はこう言います。「僕は一度、別の奨学金制度を活用して大学に進学したのですが、家庭事情を誰にも相談できずに退学をしてしまいました。再進学は諦めていたのですが、就職先の方に勧められて、もう一度勉強したい!と思うようになり応募したんです」。進学のチャンスは一度だけではないのです。
別の奨学生は「お金の心配をしなくていいという安心感に加えて、ソーシャルワーカーさんの存在にも助けられています。少し前に隣の部屋の騒音トラブルを相談したら、物件探しや引越し先の保証人についても親身になって相談に乗っていただきました」と語ります。
意志を託してくださったお金が、若者たちの未来を切り開いてくれています。