読み物

あんしんステージ法務・福祉事務所 代表 塩原 匡浩最高難度の「遺留分」を優しく解説する 

最高難度の「遺留分」を優しく解説する 

 昨今の世相を反映してか、終活セミナーや「遺言書」の講演会・相談会等のリアル開催機会がめっきり少なくなりました。それに反して「相続」や「遺言書」に関する最新知識を吸収したいと考える多くの方々の学習意欲は衰える事なく、書籍での自主学習やzoom等によるオンラインセミナーに形を変えて多くの方々の知識欲を満たしているようです。それだけ家族の「相続」に関する悩みは、深刻かつ切実であるという事なのでしょう。「相続」は誰の身にも突然起こる事であり、事前に対策を練っておくのが肝要です。今回は様々な機会を通じて寄せられた質問の中で、一番多くかつ難解な「遺留分」に関して「遺言書」の視点から、わかりやすい解説を試みます。始めは難しく感じると思いますが、しっかりついて来て下さい。もしそれでも難しければ、わかるまで何度でも読み返して下さい。いざという時にきっとあなたの役に立つはずです。


1.「遺留分」と「法定相続分」とを混同してはならない
 「遺留分」とは一言でいうと『法律に守られた相続財産の最低保証額』のことです。相続人から見ると自らの財産権を主張し得る部分のことで、被相続人〔遺言者〕から見ると財産処分が制限される部分のことです。「遺留分」を更に詳しく解説すると、「被相続人〔遺言者〕の財産は、被相続人の意思に基づいて原則自由に処分できるが、最低限の財産は遺族(法定相続人)に残すべきである。また遺族側にもそれを請求する権利がある」という考え方です(但し相続廃除や相続欠格に該当した場合を除く)〔民法第1042条〕。
「遺留分」と「法定相続分」と混同する方がいますが、全く異なる法律定義です。以前この読み物の「石原裕次郎の遺言が時を経て執行された訳」で説明しましたが、簡単に「法定相続分」のおさらいをしましょう。「法定相続分」とは、民法で定められた各相続人の相続財産の割合の事です(但し法定相続人全ての合意があれば無視できます)。「遺留分」とは異なり、「遺言書」に相続割合の指定がある場合は、「遺言書」の内容が優先します。相続発生時には法定相続人に応じて「法定相続分」が定められています。その基本3パターン(民法第900条)は以下の通りとなっています。
パターン1 被相続人に配偶者と子がいる場合 【配偶者1/2、子供1/2】
パターン2 被相続人に子がなく、配偶者と親がいる場合 【配偶者2/3、親1/3】
パターン3 被相続人に子がなく、配偶者と兄弟(姉妹)の場合【配偶者3/4、兄弟1/4】
ここで大切な事は、「遺留分」は「法定相続分」の半分(ただし、直系尊属の場合は1/3)だという事です。
 例えば相続人が妻Aと子B・C2人、父の「遺言書」に『相続財産は全て妻Aに相続させる』と遺されていた場合、子Cの「遺留分」を考えてみましょう。個別的遺留分は「法定相続割合×総体的遺留分」で算出します。子Cの法定相続割合は1/2÷2人=1/4、子Cの「遺留分」は1/4×1/2=1/8 です。


2.「遺留分」と「遺言書」と「法定相続分」の関係は、【遺留分 > 遺言書 > 法定相続分
 今迄「遺言書」の法的効力が如何に強いかを、様々な方のモデルケースで見てきました。しかし結論として、「遺留分」は「遺言書」の効果をもってしても無効とする事が出来ないのです。具体的に言うと、「遺言書」で相続割合の指定がある場合は「遺留分」に従い、指定がない場合は「法定相続分」に従ってその内容を決める事になります。つまり「法定相続分」は原則として「遺言書」によって排除し得る任意規定である為、被相続人〔遺言者〕が「遺言書」によって各相続人の「法定相続分」と異なる分け方を自由に決めて良いのです。つまり相続人(遺族等)が遺産を受け取る権利は、必ずしも保障されないのが原則です。しかし、相続財産が相続人の生活を保障する意義を持っている点や、被相続人名義の財産には相続人が被相続人に貢献した事による潜在的持分が含まれている事を考慮し、相続財産の一定割合については、強行規定(「遺留分」は被相続人〔遺言者〕によって奪う事が出来ない権利だが、相続廃除や相続欠格に該当した場合は除く規定)として「遺留分」という最低限取得できる権利を認め、一定の範囲で請求できる権利なのです。
 言い変えれば、被相続人〔遺言者〕は自分の財産の全てを自由には出来ないとも言えるので、「遺留分」以外は「自由分」と呼ばれます。つまりあなたが「遺言書」作成に際して、あらかじめこの「遺留分」に配慮しておけば、後々親族間で勃発する可能性のある無用な争いを未然に防ぐ事が出来るという訳なのです。
 前述の「石原裕次郎の遺言が時を経て執行された訳」では、石原裕次郎さんの「遺言書」があるなら、兄 石原慎太郎さんには「遺留分」がないと説明しました。このように兄弟姉妹には「遺留分」は認められておらず、「遺言書」の内容にどれだけ不満があっても、兄弟姉妹は「遺留分」を主張して、「遺言書」の内容に文句をいう事はできないのです。つまり被相続人〔遺言者〕が兄弟姉妹に財産を相続させたくなければ、「遺言書」作成時点であらかじめ「遺留分」を織り込んでおけば、その意思を実現する事も可能となるのです。


3.「遺留分」割合について
 「遺留分」とは『法律に守られた相続財産の最低保証額』と申し上げました。では相続発生の場合に、実際にどの位の割合で遺産をもらう権利があるのでしょうか?その「遺留分」割合について見てみましょう。

無題.png

「遺留分」の割合を計算するときには、2段階で計算する必要があります。まずは「総体的遺留分」といって、『相続分全体の中で、どのくらいの「遺留分」が認められるか』を明らかにし、その上で個別の「遺留分」権利者の「遺留分」割合である「個別的遺留分」を計算します。上記「遺留分」割合一覧表を解説します。
1.配偶者のみの場合、妻や夫といった配偶者は必ず相続人になり、「遺留分」の割合は1/2です。
2.配偶者と子の「遺留分」割合計は1/2で、個別が配偶者1/4、子供分だけの合計が1/4です。
3.配偶者と父母(直系尊属)の「遺留分」割合計1/2、個別が配偶者1/3、父母分の合計が1/6です。
4.配偶者と兄弟の場合は、配偶者の「遺留分」の割合は1/2、兄弟姉妹には「遺留分」はありません。
5.子のみで配偶者もいない場合の「遺留分」の割合計は1/2で、子供が複数いる場合は人数按分します。
6.父母のみで配偶者や被相続人の子もいない場合は、父母「遺留分」の割合計は1/3です。
7:兄弟のみの場合には、「遺留分」は認められておらず、兄弟が受け取れる「遺留分」はありません。
※法定相続人の内、配偶者と子供(代襲相続人含む)、父母(祖父母)には、「遺留分」が認められるのです。


4.「遺留分」が想定されるモデルケースについて

無題.png

 更にある家族の相続ケースを見てみましょう。
登場人物は4名で、被相続人〔遺言者〕父A、相続人は配偶者・母B、長男C、長女Dです。
父Aは先日「遺言書」を遺して他界しました。相続財産は不動産4,000万円と現金・預貯金1,000万円の合計5,000万円です。
「法定相続分」では、母B1/2、長男C1/4、長女D1/4ですが、長女Dを溺愛していた父Aは、「遺言書」で長女Dに全ての財産を相続させると書き遺しました。「遺言書」は「法定相続分」に優先するのでしたね。「遺言書」の通りに相続を実行すると、母Bと長男Cは全く遺産を相続できない事になります。その状況如何によっては、母Bや長男Dが父Aの遺した自宅にそのまま住み続ける事が出来なくなり、その後の生活にも困る事が想定されます。次に「遺留分」権利者全員に割り当てられる「総体的遺留分」を見てみましょう。この事例だと上記「遺留分」割合一覧表の2.配偶者と子に該当し、「総体的遺留分」は1/2で母Bの「個別的遺留分」は1/4となります。対象となる子は2名いるので、長男C分は1/4÷2人=1/8が「個別的遺留分」となります。つまり今回の「遺言書」に不満を持つ母Bと長男Cが、「遺留分」侵害者長女Dに「遺留分侵害額請求」を直接交渉や調停等にて実施した場合、長女Dは5,000万円をそのまま相続できず、
母Bの「個別的遺留分」は、1/4×5,000万円=1,250万円
長男Cの「個別的遺留分」は、1/4×÷2人×5,000万円=625万円となり、
長女Dの相続分は、5,000万円 -(1,250万円 + 625万円)= 3,125万円 となります。
 この「遺留分」請求権のことを今迄は「遺留分減殺請求権」と言っていましたが、改正民法が2019年7月1日より施行され、名称も「遺留分侵害額請求権」となりました。民法改正前の「遺留分減殺請求権」は、「遺留分」を金銭としてではなく遺産そのものを取り戻す手続きでした。例えば「遺留分減殺請求権」が相続財産である不動産に対して行使されると、その不動産は受遺者と「遺留分減殺請求権」行使人との共有となりました。そのままでは財産を自由に使えず不都合な為、その後「共有物分割」という手続きを行う必要が生じる事があり、トラブル要因ともなっていました。改正後は、「遺留分」を侵害されている人が、「遺留分」を侵害している人に対して、侵害している「遺留分」の額(侵害額)に相当する金銭の支払いを請求できるようなったのです。お金で精算すれば1回で解決する事ができます。なお「遺留分侵害額請求権」の時効は、「遺留分」が侵害された事を知った時から1年間もしくは、「相続」が開始した時から10年間です。まずは「遺留分侵害額請求権」の時効がいつから起算されるのかを確認することが大切です。


 この「読み物」をお読みのみなさまにはもうお分かりの通り、「遺言書」作成時点であらかじめ「遺留分」を織り込んでおけば相続が争族となることが避けられる可能性が高まるのです。世の中は知っているか知らないかによって、その享受する結果が大きく異なることがあります。今回の「遺留分」に関しては、まさにそのひとつの典型的な事例です。「遺留分」制度を理解した上であなたの「遺言書」に上手に活用することは、ご家族のことを大切に想うあなたの責務のひとつであると思うのです。 

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

 「遺言書を作成していても、相続人が主張できる遺産への最低限の割合(遺留分)がある」「兄弟姉妹には遺留分の権利はない」と知って、遺言書の作成が一気に進む場合があります。遺言書は、大切な人に贈る未来への手紙です。遺留分について知っておくことは、自分の思いが正しく伝わるようにするために役立つでしょう。
 日本財団遺贈寄付サポートセンターは、遺言書で財産を未来の社会貢献のために使いたいと考える方のご相談をお受けしています。ホームページからお気軽にお問い合わせください。

遺贈について詳しく知る

未来への贈り物、遺贈未来への贈り物、遺贈
受付時間 9:00-17:00 0120-331-531
  • 資料請求
  • お問合せ