読み物

吉田修平法律事務所 弁護士 吉田 修平「「特別受益」と「寄与分」」

「「特別受益」と「寄与分」」

 共同相続人の中に被相続人から遺贈を受けたり、婚姻等のためや生計の資本として贈与を受けた者がいる場合には、その者が受けた遺贈や贈与の価額を被相続人が相続開始時に有した財産の価額に加えたものを相続財産とみなして、各共同相続人の相続分(各相続人の取り分の割合)が算定されます。

 特別受益者の相続分は、こうして算定された相続分から、その者が受けた遺贈や贈与の価額を控除したものとなる、という制度のことを特別受益制度といいます(民法第903条)。受けた遺贈や贈与を特別受益といいます。

 被相続人による遺贈や贈与は、通常は遺産の前渡しとして行われていることから、遺贈や贈与を受けた相続人とそれ以外の相続人との間の不公平を是正する必要があるために設けられた制度です。

 寄与分とは、共同相続人の中に被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与(貢献)をした者がいる場合に、その者にその貢献に応じて遺産から取得することが認められる取り分のことです(民法第904条の2)。

 被相続人に財産を給付したり療養看護に努めて貢献した相続人と、そうでない相続人との間の公平を図るための制度です。

 以上の「特別受益」と「寄与分」を合わせて、共同相続人間の不公平を是正する遺産分割の修正要素とされており、特別受益と寄与分により法定相続分を修正して算定された各相続人の取り分を「具体的相続分」と言います。

 ところで、死亡した父の遺産分割は、母も亡くなってから、両親の分を合わせて行うというご兄弟もいるかと思いますが、民法が改正されて、被相続人が死亡してから、10年以内に遺産分割の申し立てを行わなければ、特別受益や寄与分の主張ができなくなりました。

 従って、お母さんが亡くなったのが、お父さんが亡くなってから10年以上後の場合には、お父さんの相続についての特別受益や寄与分の主張が出来なくなりますので、注意が必要です。

 民法の改正前は、遺産分割を行うことについての期間制限がなく、相続発生後も長い間遺産分割がされずに遺産の共有状態が継続し、その後、同じ土地等に数回の相続が発生した場合(これを「数次相続」といいます。)には、相続分の算定や権利関係が非常に複雑化することになります。

 このような遺産の共有状態を解消するために、家庭裁判所における遺産分割手続が必要になるのですが、長い時間が経過すると特別受益や寄与分に関する証拠等が散逸し、関係者の記憶等も薄れます。また、長期間遺産分割がされないことにより、相続登記もされないまま放置されるという事態も生じてきます。

 そこで、民法の改正により、共同相続人は、遺産分割手続の申立てがないまま相続開始時から10年を経過したときは、具体的相続分の算定の基礎となる特別受益及び寄与分等の主張をすることができないこととされました(民法第904条の3)。

 また、遺産の分割の調停の申立て及び遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から10年を経過した後は、相手方の同意を得なければその効力を生じないこととされました(家事事件手続法第199条第2項、第273条第2項)。取り下げられてしまうと、相手方があらためて遺産分割の申立てをしても相続の開始時から既に10年以上が経過しているため、特別受益や寄与分の申立てができなくなってしまうからです。

 以上より、相続が開始してから10年経過した後は具体的相続分を算定されることはなく、法定相続分に従って遺産分割を行うことになります。

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

民法改正により、遺産分割協議は以前より速やかに行うことが求められるようになりました。遺言書がない場合は尚更注意が必要です。ご自身の財産を遺す場合でも、生前に遺言書を遺しておくことはご自身の安心につながります。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺言書で財産を社会貢献のために使いたいと考える方のご相談をお受けしています。お気軽にお問い合わせください。

遺贈について詳しく知る

未来への贈り物、遺贈未来への贈り物、遺贈
受付時間 9:00-17:00 0120-331-531
  • 資料請求
  • お問合せ