読み物
終活あんしんステージ法務・福祉事務所 代表 塩原 匡浩「いまあなたに必要なものは、『遺言』という名の自分史です」
桜が満開を迎え、春爛漫のステキな季節を肌で感じられる今日この頃ですが、テレビをつければ世界各地で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の報道ばかりが放映され、言い知れぬ不安感が世間を覆っているように思います。みな一様に「こんな事態は生まれて初めてのことだ」と口にします。今は忍耐の時ですね。きっとこの状況は好転すると希望を持ち、特効薬やワクチンが開発されることで事態が収束することを祈るばかりです。
みなさま初めまして、遺言の専門家 塩原 匡浩(しおはら まさひろ)です。
日本に遺言の習慣を創ることに使命感を持ち、日々遺言普及活動をしております。私の信条は難しいことを簡単にお話することです。難しいことを難しく話されても余計に分からなくなりますものね。
第1回目のあなたとの出会いに、まずお勧めしたいのは遺言の作成です。
「いきなり遺言と言われても⁉」ととまどう必要はありません。遺言は決して他人事の難しいことではなく、見方によっては「人生の棚卸しと脳内整理」なのです。この読み物を通じて、遺言をイメージが悪くとっつきづらいものから、あなたの将来への「手紙」位に感じて頂ける様にやさしくご紹介させて頂こうと思うのです。
でもその前に「何故そもそも遺言が必要なのか?」を一緒に考えてみましょう。「遺言を書くなんて縁起でもない」あなたはそう思われますか?それとも「そうだね、いつかは準備しなければと思っていたのです」と思うでしょうか。私は「遺言を書くことは前向きに生きること」だと思います。人の命は有限で、誰もがいつかは必ず死を迎えます。だからこそいまを精一杯生きるわけで、それは素晴らしいことです。しかしさらに一歩踏み込んで、自分の人生と向き合う時間を捻出することは、多忙な日々の中では殆どの人が持てていないのではないでしょうか。
そうした体験ができるのが、実は遺言なのです。遺言はおもに相続人等への資産配分について書くもので、相続発生時にはじめて効力を発するものだと思われていますが、本当に素晴らしい効用はその作成プロセスにこそあります。自分の人生を振り返り整理する中で、「自分の死を起点とすると、いまの自分がどう見えるだろうか?」という客観的な視点を得て、これまでの人生を深く理解することができるようになります。それはとりもなおさず、「これからの人生をいかに生きるか?」を深く見つめ直すきっかけにもなるのです。
私は、遺言を作成したい方々のお手伝いをしています。日々行われる遺言作成の現場で感じたことのひとつに、「日本人はどうしてこんなに、遺言を書く人が少ないのだろう?」ということがありました。欧米では60%~80%の人々が遺言(Will・Estate Planning)を書いているのに対して、日本では亡くなる人の10%にも満たないともいわれます。日本で遺言を書く人が少ないのは、相続ドラマでの骨肉の争いに登場するという悪いイメージのせいかも知れません。また、「遺言を書いたら寿命が縮まってしまうよ」という笑い話のような思い込みを持つ人もたまにいらっしゃいますが、「日本に遺言をする習慣がなかった」ことがその原因のひとつだと私は考えています。
遺言という制度を改めて考えてみるととても役立つ制度です。あなたの意思がのこせて、法的効力もあるものなのです。ここがエンディングノートと大きく異なる点です。あまり知られていないのですが、日本の法律では15歳から遺言を書くことができます(民法961条)。つまり遺言は本来、我々日本人の誰もが簡単に取り組めるものであり、とても身近な法律行為なのです。そして遺言は何度でも書き直せて、最後の日付のものが法的効力を持ちます。法的効力があるということは、あなたの相続人が争族(親族間で遺産を巡って争うこと)等のトラブルに巻き込まれる可能性が極めて少なくなることを意味します。つまり安心な気持ちで日々過ごせる、あなたのお守りとも言えます。
「社会不安騒動」が世の中を覆っているいまこそ、あなた自身が自分の軸をしっかりと打ち立てることが必要なのではないでしょうか。その時に役立つのが実は「遺言作成プロセス」なのです。遺言の構造は法的効力のある「本文」と、自分の生き様や大切な人への想いを綴る「付言」がありますが、私はこの「付言」に自らの想いを記すことは、遺言のもうひとつの存在意義であると考えています。私が遺言作成をお手伝いする時に「付言」に書いて頂くことは、自らの人生の来し方行く末に想いを馳せ、幼少の頃からの様々な苦難を乗り越えてきた経験や、悔しかったこと、嬉しかったこと、感動したこと、そしてこれからの人生で取り組みたいこと等々です。そしてその「付言」を書く為に自らを深掘りするプロセスが、自分と向き合い「本当に大切なものは何か?」を模索し、自分自身を知ることにつながると思うのです。
自分の財産を誰にのこそうかと考える前に、等身大の自分自身を把握した上で、自分はこれから何をしたいのか、何をすべきなのかをこの機会に考えてみては如何でしょうか。いまのこの難局を乗り切るためにも、ひとりひとりが本来の自分自身を取り戻すことが必要です。まずはあなた自身が、「遺言」という名の自分史を書いてみることをお勧めいたします。
日本財団が提唱する、遺贈という名の選択
ご自身のこれまでの人生を振り返ることは、大切にしていたあなたの「思い」を確かめることです。その大切なあなたの「思い」を遺言書で未来に遺すことができます。遺言書で、あなたの「思い」のつまった財産を、未来の社会貢献活動のために寄付として遺すことができるのです。それが遺贈寄付です。財産の遺し方を遺言書に記し、安心して余生を過ごしたいものです。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、「遺贈寄付」にまつわるご相談をお受けしています。