読み物
老後日本経済新聞編集委員 山口 聡「働くことで健康になる」
「年をとっても、できる限り長く働き続けよう」との大合唱が世の中で起こっている。
政府は企業に対して、従業員が希望すれば70歳まで働ける仕組みをつくってほしいと考えている。識者たちも人口が減っていく日本において、高齢者も働かないと社会が持たないと訴える。
これらはいずれも、経済的な発想に基づいている。今後、これまでに比べれば公的年金の支給水準は下がる。下がった分については、個人が働いてその賃金で補ってほしいというのが政府の思惑だ。昨年は、老後資金として2000万円の備えが必要との金融庁の報告書が物議を醸した。この件でも「備えがないなら、働けばよい」とコメントされることが多かった。日本で働く人が大きく減り続ければ、国力も低下する一方だろう。高齢者も女性も外国人も働ける人はみんな働いてほしいとの考えも当然といえば当然だ。
ただ、働くことのもう一つの意義も注目されている。働くことで高齢者が心身共に健康になることだ。
そもそも健康でなければ働けないだろうと言われると、その通りなのだが、ここは基本的には健康な人がそのまま働き続けることをイメージしてもらいたい。「働くことで健康が維持できる」というほうが正確かもしれない。
働いていない人に比べ働いている人の方が健康であり、医療費も使わないといった実地検証に基づく報告が全国各地にある。社会に参加し貢献している、役立っているという意識やからだを動かすことがよい方向に作用しているようだ。賃金を得るよりも働くこと自体を重視する「生きがい就労」といった言葉もあるほどだ。
そして、高齢者が働く場として注目されているのが農業だ。オフィスや工場などと違って、屋外で土に触れ、マイペースで、無理がないように働くこともできることが長所という。農業法人や企業、NPO、行政、大学などがかかわる農場でパートやアルバイト的に働くことができる場が各地で提供されつつある。賃金が得られる労働ではないが、家庭菜園のようなものでも健康づくりという面からは望ましいだろう。
都会では無理と思われるかもしれないが、都市近郊のいわゆるベッドタウンと呼ばれる地域でもそのような場はある。
例えば以前取材した千葉県柏市にある団地では、地域の中の農地を使った高齢者の「生きがい就労」をまちづくり計画の中に盛り込んでいた。つい最近も、高齢者の健康づくりと農業の人手不足対策の一石二鳥を狙ったプロジェクトが北九州市で進んでいると聞いた。自治体が小さな区画の農地を住民に貸す市民農園のほか、企業や農家が設ける指導付きの体験農園も全国各地で増えている。
関心があれば、地元の自治体などに尋ねてみるといいかもしれない。
日本財団が提唱する、遺贈という名の選択
高齢者が定年後も働くことが、世の中でも奨励されるようになりました。超高齢化社会を迎える日本において、自助、共助、公助の考え方に基き、ひとりひとりが豊かな生活を送るために努力することを、誰もが心に留めておく必要があるのではないでしょうか。その考え方に立つとき、自分の財産を未来の社会のために遺したい、それも一つの「共助」であると思われている方がいましたら、「遺贈」という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
遺贈は、遺言書で社会貢献活動を行う団体などに自分の財産を遺すことです。財産の遺し方を遺言書に記し、安心して最期を迎える準備をしたいものです。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、「遺贈寄付」にまつわるご相談をお受けしています。