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金融日本経済新聞 シニアライター 宮田佳幸「住民税は前年の所得で決まる」

毎年5~6月には、住んでいる自治体の「住民税決定通知書」を受け取ります。会社勤めの人なら勤務先を通じて配布され、6月から翌年5月まで、12回に分けて給与から天引きされることになります。
一口に「住民税」といっても、実はいろいろ種類があります。まず、個人が払う個人住民税と、企業などの法人が払う法人住民税です。個人住民税の中でも、所得割、均等割、利子割などがあります。このうち、所得割と均等割は、さらに市町村民税と都道府県民税に分けられます。東京23区に住んでいるなら特別区民税と都民税になります。
住民税決定通知書に書いてあるのは、今年度分の所得割と均等割の額です。所得割は、所得に応じて行政サービスの費用を負担する趣旨で、標準税率は市区町村と都道府県の合計で10%です。均等割は、納税者一人ひとりが均等に負担するもので、標準税額は市区町村分が1人3000円、都道府県分が1人1000円。ただし、各自治体が条例で独自の均等割額を設定している場合もあります。そして、この均等割に加えて森林環境税が1人1000円、徴収されます。
所得割は、前の年の所得によって決まります。1月から12月までの収入から、基礎控除など様々な控除を引いて、そこに10%の税率をかけ、さらにそこから、ふるさと納税や住宅ローン控除などの「税額控除」を差し引いた金額が所得割の額になります。
住民税の額は前年1~12月の所得で決まるため「社会人2年目は要注意」とよくいわれます。学生の間は収入が少ないので新卒で入社して1年目は住民税がほとんどゼロのことも多いのですが、1年目の給与所得を基に2年目の6月の給与から住民税が天引きされるので手取りが減ってしまうことが多いわけです。
ファイナンシャルプランナーの深田晶惠さんは「60歳以降になって住民税で驚くことになる人も多い」と指摘します。たとえば、60歳で定年を迎えた人が再雇用で働くと、年収はほとんどの場合、大幅に減ります。しかし住民税は前年までの高収入を基に計算されて、大幅に下がった給与から引かれるので、手取りが大きく減ることになります。65歳になって再雇用を終えて年金生活に入ると、さらに収入が減るのに、その後約1年間の住民税は、働いているときの額とほぼ同じです。定年退職や再雇用の終了を控えている人は、心の準備をしておいたほうがよいですね。