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金融日本経済新聞 シニアライター 宮田佳幸「金融市場の混乱 シニア世代はどうする?」

米国のトランプ政権による関税政策の影響で、金融市場が混乱しています。世界の株式相場が大幅安に見舞われたことに加えて、外国為替市場では円高ドル安が進みました。少額投資非課税制度(NISA)で人気を集めていた米国株や世界株の投資信託は、株安と円高のダブルパンチで大きく値下がりしています。2024年にスタートした新NISAで米国株や世界株への投資を始めた人の多くが含み損を抱えていることでしょう。
若い世代なら、現在のような市場の混乱に慌てて、値下がりした投資商品をすべて損切りするようなことはやめるべきです。株式相場に変動は付きものであり、時には大きな下落もありますが、20年以上の長期でみれば、利益を得られる可能性が非常に高いからです。むしろ株価が下がっているときこそ、積み立て投資をコツコツ継続していれば、安い値段で買うことができて将来のリターンも大きくなります。
一方、シニア世代はこれから20年以上の長期投資は難しいケースも多いはずです。株式投資信託などのリスク商品をすべて売る必要はありませんが、大きなリスクを取り過ぎていないか、自分の保有ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を一度点検しておきましょう。残された運用期間と比べてリスクが大きすぎると判断した場合は、金融資産の一部を個人向け国債や、株とは異なる値動きをすることが多い金(ゴールド)などに移すことを検討してもよいでしょう。
ただし、すでに老後資金として十分な資産を確保しており、子ども世代への相続や、まとまった財産の遺贈・寄付などを視野に入れているシニアなら、あまり心配する必要はないかもしれません。
持っている株式や投資信託などの金融資産が一時的に大きく値下がりしたとしても、その金融資産を子ども世代が相続すれば、十分にリカバリー可能な長期の投資期間を確保できるはずです。つまり「親子2世代で長期投資」です。
金融市場が混乱しているときは過度に心配したり慌てたりしがちですが、自分の金融資産の現状をきちんと把握して冷静な判断をすることが求められます。