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金融日本経済新聞 編集委員 兼 論説委員 山本由里 「ボーナスシーズン到来!」
待ちに待ったボーナス(賞与)シーズンがやって来ました。皮切りは12月10日の国家公務員のボーナス支給日。法律で決められているこの日を基準にして、地方公務員や会社員のボーナス支給も始まります。
改めて、ですがボーナスとは定期的に支払われる給与とは別に支給される一時金を指します。語源はラテン語で「良い」を意味する「Bonus(ボヌス)」。まさに良きもの。火の車の家計にとってはマラソンコースの途中に設けられた給水所にたどり着くイメージでしょうか。
法で規定される公務員と異なり、民間企業の場合、有無や額、タイミングに決まりはありません。会社の方針次第。業績や人事戦略に応じて変わりえます。だから「毎年このぐらい」と当てにして住宅ローンの返済予定などを組むのは、なかなかにリスキーな行為なわけです。
一方で最近の朗報としては、人手不足に対応した引き留め策として社員だけでなくパートやアルバイトなど、非正規雇用の立場の方にもボーナスを出す企業が増えています。たとえ額はそれほど多くなくても「あり」と「なし」では大違いですよね。
今年のボーナスは昨年に比べて増額が見込まれています。みずほリサーチ&テクノロジーズの調査によると、この冬の1人当たりボーナス額は前年比3.5%増の41万円弱。4年連続で増えバブル末期の1991年以来、33年ぶりの高い伸びになりそうです。
当然と言えば当然です。今年の春闘では、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた平均賃上げ率は5.1%と91年以来33年ぶりに5%を上回りました。連動してボーナスにも相応の伸びが期待できるわけです。
とはいえ、それはあくまで名目の数字の伸び。生活実感としては物価上昇率を補う収入増があるかが焦点になります。その点はまだ道半ば。9月の消費者物価指数(CPI、持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年比2.6%上昇しています。特に「令和の米騒動」を受けた米をはじめ食品の値上がりが厳しく家計にのしかかります。
そのせいでしょうか。「冬のボーナスの使い道」を聞いたある調査によると「預金」や「旅行」などの常連の答えに混じり、「食品」との答えが目を引きます。日ごろは遠ざけている和牛や海鮮、ワインなどが登場する食卓を想像するとちょっとホッコリしますね。
でもくれぐれも使いすぎにはご注意を。行動経済学の知見によると、給与など恒常的な収入と別に入るお金はパッと使ってしまいがち。「メンタルアカウンティング」と呼ばれる現象です。お金に色はないのに、臨時収入には財布のひもが緩んでしまいがちな「心の財布」を我々は持っているのです。
このコラムも年内最終回です。今年も読んでいただきましてありがとうございました。少し早いですが、どうぞ良い年をお迎え下さい(フランス語では「Bonne année (ボナネ)ですね)。