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吉田修平法律事務所 弁護士 吉田 修平「相続人がいない場合の問題」

「相続人がいない場合の問題」

 一人暮らしをしていたXさんが亡くなった場合に、その人に相続人がいるのか、調査が必要になることがある。

 例えばXさんが賃貸マンションで暮らしていたとすると、Xさんが亡くなってしまった場合には、居室の原状回復や未払賃料や敷金の精算等が必要になってくるが、それらはXさんの相続人と賃貸人との間で行われることになる。

 そこで、賃貸人はXさんの相続人を調査することになるのであるが、誰でも亡くなった人の戸籍を調べることができるわけではない。個人情報の問題があるため、親族でない人は勝手に戸籍を取ることはできないので、弁護士等に依頼して調査をすることになるのが一般的である。

 弁護士が調査をする場合、Xさんが新宿区で亡くなったとすると、まず新宿区役所に申請をして、Xさんの戸籍(除籍謄本)や住民票の除票を取り寄せることになるが、新宿区での調査だけでは済まない場合がある。

 Xさんが、新宿区を本籍地(戸籍を登録している場所)とする以前に、八王子市を本籍地としていたのであれば、八王子市からも戸籍を取得しなければならないし、さらに八王子市を本籍地とする以前に、大阪市も本籍地としていたのであれば、大阪市からも戸籍を取り寄せなければならない。Xさんが福岡市で出生しており、出生時の本籍地が福岡市であったのであれば、福岡市の戸籍も取り寄せなければならない。

 すなわち、Xさんが生まれてから死ぬまでの、すべての戸籍(除籍謄本・改正原戸籍謄本)を取り寄せなければならない。
 それは、どこかの時点で、例えば結婚をして子供が生まれていたり、養子をとっていたりすることもあるからである。

 その後、本籍地を移したり(転籍)、法律の改正により新しい様式の戸籍への作り変え (改製)があると、それ以前に戸籍から抜けた人は、新しい戸籍には載らないため、相続人を確定させるためには過去のすべての戸籍を調査する必要が生じてくるのであるが、Xさんに建物を貸していた賃貸人は、かなりの時間と労力と費用を要することになる(※なお、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されたが、それに伴い同年3月1日からは、Xさんの配偶者や直系尊属・直系卑属に限り、最寄りの市町村の窓口に出頭して請求すれば、Xさんの生まれてから死ぬまでのすべての戸籍等を取得することができるようになった(戸籍の広域交付制度))。

 それらの調査をした結果、相続人のいないことが判明したり、あるいは、相続人がいることはわかったが、相続人の全員が相続を放棄してしまうと、相続人は不存在ということになってしまう(なお、イトコは相続人ではないので、注意を要する)。

 このようにして、相続人が存在しない場合には、Xさんの財産の処理はどうなるのであろうか。

 Xさんに建物を貸していた賃貸人は、裁判所に申立てをして「相続財産清算人」を選任してもらう手続を取ることになる。 「相続財産清算人」は、亡くなった人のすべての財産を把握して換価などした上で、債務を弁済するなどの処理を行うことになる。

 したがって、その行う事務処理は多岐に渡るため、弁護士などが選任されることが多いが、弁護士の費用も大きなものとなるし、弁護士の費用等は、あらかじめ申立人が裁判所に予納しなければならない。

 Xさんが遺言書を書かないでいた場合に、相続人が不存在になってしまったときには、賃貸人といった第三者に多大な負担をかけてしまうことになるし、清算後、仮に財産が残ったとしても、それは国庫に帰属することになり、Xさんが長年かけて築いた財産の使い道について、Xさんは自身の意思を示すことができないことになってしまう。

 このように、一人暮らしのXさんにとっても、遺言書を書いておく必要性は非常に高いのである。

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