読み物

吉田修平法律事務所 弁護士 吉田 修平「遺言について」

「遺言について」

 最近、「遺言書を書いておくべきだ。」という話をよく耳にします。でも、なぜ遺言が必要なのでしょう。遺言がないと何が困るのでしょう。この辺を正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。

 まず、いわゆる相続との違いを考えてみましょう。

 相続とは亡くなった人(被相続人といいます。)の亡くなったときのすべての財産(権利だけではなく、借金等の債務も含みます。)を相続人に承継させることをいいます。相続のことを包括承継ともいいますが、被相続人と相続人との間に、被相続人が死んだことにより何もしなくても(遺言書を書かなくとも)法律の規定により相続が生じます。

 これに対して、遺言により亡くなった方の財産を特定の人に承継させることができます。特に、相続人ではない第三者に対しても遺言により遺産を承継させることができ、これを「遺贈」といいます。

 また、遺言では、相続人に対して財産を残すことも可能です。例えば、相続人の一人に対して自宅を「相続させる。」とする場合です。これを、「相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)」といいますが、判例上は遺産分割方法の指定とされています。簡単にいえば、相続人は被相続人の死亡により何もしなくても財産を相続できるのですが、被相続人が遺言により、具体的にどの相続人にどの財産を相続させるかを決めることができるということです。

 さらにわかりにくいのは、相続人の一人に対して、特定の財産を「遺贈」することもできるという点です。機能的には、相続させる旨の遺言と同じなのですが、法律上の性格が異なることになります(図を参照してください。)。

 遺言については、厳重な法律上の要件が定められており、その要件を満たさない遺言は無効になります。例えば、自筆証書遺言は、全文、日付を自ら手書きし、署名押印もしなければなりませんが(目録だけはコピー等でも作成できることになりました。)、これに違反してパソコン等で作った遺言書は無効ということになるのです。

 また、遺言は「意思能力(事物に対する一応の判断力、または自己の行為の意味を認識し、その結果を判断することができる知的能力といわれています。)」がなければすることができません(無効です。)。さらに、遺言は15歳に達しなければすることができないこととされています。

 遺言書に記載した事項については、法律で定めたものに限り効力が生じることとされています。例えば、婚姻関係にない女性が産んだ自分の子供を「認知」したり、相続分(相続するときの取り分の割合)を指定したり、遺産分割方法(遺産の具体的な分配の方法)を指示したりすることです。

 しかし、これ以外のことを遺言書に書いておくことも可能ですし、最近はその有益性が話題にもなっています。例えば、「お父さんは、あなたたち家族に恵まれて、とても幸せだった。長男には自宅を残すが、〇〇家の後を継いで、家業を益々発展させてもらいたい。長女には、それ以外の預金と株を残す。少ないと思うかもしれないが、父としては精いっぱいのものなので、夫の〇〇君とともに頑張ってください。家族みんな健康に注意して、末永く幸せに暮らしてください。」などと書くことにより、感謝の念を示したり、死後の分配方法についての考え方を示したりすることです(これを「付言事項」といいます。)。これにより、残された遺族の方たちも癒されたり、後日の紛争を避けることが可能になるといわれています。

 最近は、遺言書の書き方も緩和されてきましたし、自筆証書遺言の保管に関する新しい制度もできましたので、ますます遺言制度は利用しやすくなっていると思います。                                                                      
                                                      以上                                                                                                   挿入図

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

遺言書を書いておくことは、のこす人ものこされる人にも安心をもたらす大切な行為です。ぜひ前向きに、早めに取り組みたいものです。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺言書で財産を社会貢献のために使いたいと考える方のご相談をお受けしています。ホームページ、お電話でお気軽にお問い合わせください。

遺贈について詳しく知る

未来への贈り物、遺贈未来への贈り物、遺贈
受付時間 9:00-17:00 0120-331-531
  • 資料請求
  • お問合せ