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日本経済新聞編集委員 宮内禎一「船旅のすすめ」

「船旅のすすめ」

 35年ほど前、カリブ海のクルーズに参加したことがある。米国自治領プエルトリコの首都サンフアンを出港した大型客船はカリブ海のアンティグア、マルティニーク、バルバドスなどの島々を5泊6日で巡った。毎晩、様々なアトラクションがあるほか、ゆっくり海を眺めたり、本を読んだり、プールで泳いだりしていると、まったく飽きがこない。

 食事は大きな丸テーブルに8人。リタイアした老夫婦、友人同士、アフガニスタンから米国に移住した医師夫妻ら、いつも同じメンバーと食卓を囲んだ。

 20年ほど前には、シンガポールを出港してマラッカ海峡をマレーシア沖まで行って戻ってくる1泊2日のクルーズに参加した。乗客は華人系が多く、シンガポール領海を離れると営業が始まるカジノにみんなが殺到し、プールは閑散としていた。

 今ではカジノを含む統合型リゾート(IR)がシンガポール国内にできているが、当時はIR開設の是非を巡り国民を二分する議論の真っ最中。建国の父、リー・クアンユー氏が「華人は賭け事が好きだから、カジノには反対」と懸念していたのを、なるほどと思うほどのカジノ人気だった。

 さて、新型コロナウイルス禍の初期に、横浜港に停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で集団感染が起きてからこの2月で4年。「クルーズ船は危険」というイメージがようやく払拭され、世界一周や日本近海のクルーズに再び人気が出てきた。

  例えば4月出発の「飛鳥Ⅱ」の100日間世界一周は1人690万円から3390万円(2人一室利用の場合)という。

 ただ、もっと気軽にクルーズ気分は味わえる。お薦めは多島海の美しさや豊かな歴史・文化資源に加え、海が穏やかな瀬戸内海。近代ツーリズムの祖とされる英国のトーマス・クックは150年前に訪れ、英国やスイス、イタリアなどの湖と比較して「それらの最良の部分を集めて一つにしたほど美しい」と絶賛したという。かつては京阪神から別府などへの新婚旅行でも船が利用された。 

 現在、瀬戸内海を昼間に定期運航する旅客船がないのは残念だが、大阪や神戸と九州の大分や宮崎を結ぶフェリー航路が隠れた観光ルートとして人気だ。

 商船三井 さんふらわあ は昨年、新造船「さんふらわあ くれない」と「さんふらわあ むらさき」を相次いで大阪~別府航路に投入した。「カジュアルクルーズ」をコンセプトに、バルコニーを備えたスイート専用フロアを設け、展望大浴場やドッグランも備える。個室が中心で、かつての雑魚寝のイメージはない。

 同社は1万円程度で関西と九州を往復できる0泊2日の「弾丸フェリー」切符を発売しているほか、今年も数回、瀬戸内海の景色が楽しめる「昼の瀬戸内海カジュアルクルーズ」を運航する。

 フェリーには関東と北海道を結ぶ航路や日本海を運航する航路もあり、楽しみ方は様々。春の観光シーズンを迎え、フェリーでクルーズ気分を味わうのもいいだろう。船旅が気に入れば、次は本格的なクルーズ船に挑戦してみてはどうか。                                

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

コロナも落ち着いてきて、旅行する方々も増えてきています。船旅で海洋の景気を見ながらクルーズし自己を見つめる時間を作ることも大切ですね。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺言書で財産を社会貢献のために使いたいと考える方のご相談をお受けしています。ホームページ、お電話でお気軽にお問い合わせください。


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