読み物

日本経済新聞編集委員 宮内禎一「読書の秋 本の楽しみ方は多彩に」

「読書の秋 本の楽しみ方は多彩に」

 「読書の秋」 本の楽しみ方は多彩に 「読書の秋」を迎える。活字離れと言われて久しいが、実際は本との親しみ方は多様になりつつあり、書店や図書館は人々が集うコミュニティの拠点としても重視されるようなっている。
 
 出版文化産業振興財団の2022年の調査によると、書店が1軒もない市区町村は26%に上る。人口減少や活字離れ、電子書籍やインターネット通販の普及など要因は多いが、地方を巡って書店や図書館をのぞくと希望の芽はまだある。  

 福井県敦賀市のJR敦賀駅前には22年9月に公設民営書店「ちえなみき」が開業し、最初の3カ月で10万人が訪れた。同市は「次世代への投資、知への投資となる知育・啓発施設」と位置付けて、指定管理者に丸善雄松堂と、目利きの編集者である松岡正剛所長の編集工学研究所を選んだ。  

 市が初期在庫約3万7000冊の購入費も負担し、「現場の書店員が売りたくても売れなかった、置くべき本を」と指定管理者に依頼した。読み聞かせや絵本づくりなどの催しがあり、「駅前に若い人が増えた」と、市の担当者は開設の効果に目を見張る。  

 長野県松本市の書店兼喫茶「栞日(しおりび)」。自分が関心を持つ独立系出版物とカフェを組み合わせた店を開いて松本で暮らし続けたいと願った菊地徹さんが13年に開業した。この城下町には本を備えたカフェがあちこちにあり、街の魅力を高めている。  

 京都市の京都大学の近くでは、「私設圖書館」がオープンして今年で50年を迎えた。落ち着いて読書や勉強、思索ができる場所にと、館主の田中厚生さんが妻の園子さんと民家を借りて開いた。以来、地域住民や受験生らに愛され、子どもを連れて数十年ぶりに訪れる人もいる。利用料は平日2時間以内で270円。京都観光に疲れたら、立ち寄ってみてはどうだろうか。  

 各地に私設の図書館は増えている。感想つきで寄託する本をきっかけに利用者が交流する「まちライブラリー」は11年の誕生以来、店舗や病院、個人宅などに広がり、全国で1000カ所を超えた。退職後に自宅を開放して図書館にしたり、亡くなった両親の蔵書が残る実家を図書館にしたりするケースもある。提唱者の礒井純充さんは「本のある場所が地域のたまり場になる」と語る。
 
 兵庫県明石市では信用金庫や福祉施設などが本を置く「明石まちなかブックスポット」が約70カ所に達した。同市は「『いつでも』『どこでも』『だれでも』手を伸ばせば本に届くまち明石」を掲げる。子育て政策からも、本に親しめる環境づくりは重要だ。  

 街の書店を支える動きも出てきている。兵庫県尼崎市では高齢の書店主夫婦を支えるため、ボランティアが本の配送を順番に担っている。
 
 読むだけでなく、自分で本を作るのも面白い。SNSの時代に、あえて紙の本を自主製作する「ZINE(じん)」が静かなブームになっている。語源はmagazine(マガジン)。欧米で始まり、10年ほど前から日本でも広がってきた。サイズやページ数は自由。紙質や作り方にこだわって個性豊かな作品に仕上げる。旅行記、写真集、小説や評論、自分史など内容は様々。ZINEを作るサークル活動もあり、完成した本を交換して楽しんでいる。今年の読書の秋は気軽にZINEを作ってみるのも面白そうだ。

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

秋の夜長、読書に勤しむのも楽しいです。本を読みながら自分の将来を考える良い機会かもしれませんね。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、社会貢献により遺言書で財産を社会貢献のために使いたいと考える方のご相談をお受けしています。ホームページ、お電話でお気軽にお問い合わせください。

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