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老後日本経済新聞編集委員 宮内禎一「健康増進の目安は1日8000歩 ロングトレイルで「歩く」を楽しむ」
歩くことが健康増進につながると言われるが、どのくらい歩けば効果が上がるのだろう。米国国立衛生研究所(NIH)などが40歳以上(平均57歳)の米国人4800人を10年ほど追跡調査した結果では、1日平均4000歩しか歩かない人に比べ、総死亡リスクは6000歩の人で32%、8000歩の人で51%、1万2000歩の人で65%低下した。脳卒中や心筋梗塞、がんによる死亡率も歩数が多いほど低下していた。
日本でも群馬県中之条町の65歳以上の住民5000人を長期的に調べた「中之条研究」がある。その結果、「平均1日8000歩、そのうち20分は息が弾むくらいの速歩」によって、糖尿病や高血圧などの予防に効果があるという。
この「8000歩」が地方自治体などが掲げる健康対策の一つの指標になっている。東京海上日動あんしん生命保険の「あるく保険」でも1日平均8000歩を達成すれば還付金を受けられる。
高齢になれば8000歩は難しいが、「今よりももう○歩余計に歩く」を目標にすればよい。歩数はスマホなどのアプリで簡単に計測でき、過去との比較も容易だ。まず身近な地域で散歩コースをいくつか作ってみる。いつもより遠い店まで買い物に行ったり、一駅手前で降りて歩いたりしてもよいだろう。
歩くのを楽しむには自然や歴史、文化に触れながら野山を巡る「ロングトレイル」に注目したい。登山ほどハードではなく、里山や街道などをゆっくり歩いて楽しめるコースの整備が各地で進んでいる。
NPO法人の日本ロングトレイル協会(長野県小諸市)には整備中も含めて28のトレイルが加盟している。筆者も以前、浅間山などを眺めながら歩く「浅間・八ケ岳パノラマトレイル」を体験したことがある。田んぼや畑、森の中などを歩き、小諸城址の懐古園や養蚕農家の建物が残る集落も通過する。草花や鳥の声を愛でながらゆったり歩くことができた。
協会に加盟していないトレイルも含めて、全国に様々なトレイルがあり、難易度やコースの内容は様々だ。首都圏には三浦半島や房総半島などに魅力的なコースがある。東北海道にある「北根室ランチウェイ」は牧場や摩周湖などを経由する途中、農場のトレーラーハウスや温泉などに宿泊しながら歩ける。
東日本大震災の復興支援を目的に青森県八戸市から福島県相馬市までをつなぐのが「みちのく潮風トレイル」。コースは断崖絶壁や浜辺、旧街道など変化に富む。全長は1025キロあるが、体力に応じて好きな区間を選んで歩けばよい。
「京都一周トレイル」は京都盆地を囲む山道を歩く全長約120キロのコース。伏見稲荷大社、比叡山、清水寺、大原、鞍馬、嵐山など観光名所の近くを通り、疲れたら下山してすぐ市街地に戻れる。何回かに分けて歩き通すのが人気だ。
日本ロングトレイル協会は22年、北海道から沖縄県まで27道府県のロングトレイルをつないで列島を縦断する「JAPAN TRAIL構想」を発表した。全長約1万キロのうち半分ほどはすでに通行できるという。少しずつこのトレイルに挑戦するのも楽しいかもしれない。
日本財団が提唱する、遺贈という名の選択
無理をせずに楽しみながら、まずは「今よりももう○歩余計に歩く」を取り入れてみては いかがでしょうか。 日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、亡くなった時の財産を社会貢献活動に役立てたいというお気持ちを叶えるためのご相談をお受けしております。ご相談は無料です。 お気軽にご相談ください。