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日本経済新聞編集委員 宮内禎一「福祉のまちづくり30年 誰もが移動しやすい社会に」

「福祉のまちづくり30年 誰もが移動しやすい社会に」

駅や商業施設、オフィスビルなどに手すりやスロープ、障害者用トイレ(バリアフリートイレ)があるのはもはや当たり前になっているが、20~30年前はそうではなかった。例えば主要鉄道駅の障害者用トイレの設置率は2000年度末でわずか0.1%。

 それが2019年度末は88.5%にまで増加している。車椅子スペースの設置など鉄道車両のバリアフリー化も同じ期間に10.1%から74.6%に高まった。

 兵庫県と大阪府が駅のエレベーター設置や建物、道路のバリアフリー化などを促す「福祉のまちづくり条例」を全国で初めて制定して、この10月で30周年を迎える。その後、全都道府県が同様の条例を制定し、国も追随する形で建築物のバリアフリー化を進めるハートビル法や交通バリアフリー法を制定した。

 1970年代に始まった障害者の外出運動やエレベーター設置運動が行政を動かしてきた。現在、障害者だけでなく高齢者やベビーカーの利用者が街を比較的自由に移動できるのは、こうした運動のたまものといえる。

 施設・設備などハード面の整備に加えて、ソフト面でも進歩がある。今なおタクシーの乗車拒否や地方での無人駅の増加といった課題は残るものの、外国人なども含めて誰もが利用しやすい「ユニバーサルデザイン」は、東京五輪・パラリンピックでの実践などを経て一層前進している。

 障害者や高齢者など誰もが観光やスキーを楽しめる環境を整える「ユニバーサルフィールド」の考え方も広がり始めた。長野県富士見町の富士見高原リゾートはアウトドア用車椅子や着座式スキー、遊覧カートなどを備え、誰でも斜面の花畑やスキーが楽しめるようにしている。

 病気やケガをした人が旅行しながら機能を回復する「リハビリ旅行」をアレンジする旅行会社もある。事前に理学療法士らの専門家がエレベーターやスロープの有無など安全に旅行できるルートや施設を見定める。

 アウトドア用車椅子など機器の開発も進む。JINRIKI(長野県箕輪町)は車椅子に取り付けて人力車のように引っ張る補助装置を開発した。段差がある場所で車椅子を押すのは難しいが、引っ張るなら段差を越えやすい。観光だけでなく災害時の避難用にも需要が伸びている。

 階段や段差などを越えるバリアフリー化は国の法律や自治体の条例で大きく進み、ソフト面でもユニバーサル化が勢いを得ている。これまではコロナウイルス禍で観光にも行きにくかったが、感染状況が落ち着いてくれば家にこもっていた高齢者も以前より外出しやすくなるだろう。

 自動運転の技術も進んで近い将来、誰もが移動しやすい社会になる可能性がある。ただし、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合う「心のバリアフリー」はまだまだ十分とはいえない。やはり最後は心の持ちようなのだ。

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

時代は変わり、町のバリアフリー化は進んでいますが、心のバリアフリーはこれからも私たち一人一人が意識していく必要がありそうです。 日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、亡くなった時の財産を障害者支援に役立てたいといったお考えの方のご相談をお受けしております。ご相談は無料です。お気軽にご相談ください。

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