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日本経済新聞編集委員 宮内禎一「災害への備え やるのは『今でしょ!』」

「災害への備え やるのは『今でしょ!』」

 7月に静岡県を訪れたときのこと。夕方に雨が急に強まり、午後8時すぎ、屋外スピーカーから「危険な場所から全員避難しましょう」と放送が流れた。宿泊する旅館の部屋は2階だったが、隣には川が流れている。

 旅館からは何も説明はなく、パソコンで情報収集した。『その地区に警戒レベル4「危険な場所から全員避難」が発令されたこと。旅館の場所は土砂災害警戒区域ではないこと。隣の河川の水位は刻々と上昇していたが、警戒水位には達していないこと。』そして雨雲レーダーをチェックする。そのうち雨脚は弱まり、水位も下がり始めた。結果オーライでも、こんな対応でよかったのかモヤモヤが残った。

 地球温暖化の影響か、日本でも近年、台風や集中豪雨の被害が増加。大きな地震や噴火も毎年のように起きている。日ごろの準備が必要と言われていても、防災グッズの用意ぐらいで済ませている家庭も多いのではないか。

 まずは居住地の自治体のハザードマップで土砂崩れや洪水のリスクを確認しておくことが必須だ。マップを見るとわかるが、土石流のリスクはかなり広範に及ぶ。そして家族で話し合って「マイ・タイムライン」を作る。備蓄の確認や避難のタイミングなど災害時に取るべき自分の行動を時系列でまとめたものだ。

 避難場所へのルートを決めておき、事前に歩いて危険箇所をチェックする。昼と夜と両方確認した方がよい。東京都や横浜市など多くの自治体がマイ・タイムラインをスマートフォン上で簡単に作成できるアプリを配信している。拡張現実(AR)を使って各地域の浸水状況を疑似体験できる機能もある。

 立派な堤防があっても安心は禁物だ。2019年10月、長野市北部の千曲川堤防が決壊した場面をテレビで見て目を疑った。そこは1年前、河川改修の取材で歩いたところ。かさ上げなど強化工事が終わったばかりの立派な堤防は、想定を超える圧倒的な水量にあえなく決壊してしまった。

 一方、地震対策で事前に取り組むべきなのは家具や電化製品の転倒防止対策だ。1995年の阪神大震災では家具などの下敷きになって逃げられずに死亡したり負傷したりした人が多かった。

 自宅だけでなく、通勤・通学時や勤務先で災害に遭遇した場合の対応も事前に想定しておいたほうがよい。地下街などでパニックが発生し「群集災害」に巻き込まれる恐れもある。避難に時間がかかる高齢者や障害者は、事前に手助けしてくれる人を決めて避難計画を立てるか、自治体の「避難行動要支援者名簿」への登録申請が第一歩になる。

 「天災は忘れた頃にやってくる」というのは物理学者で随筆家の寺田寅彦の言葉と言われるが、最近は台風や集中豪雨、地震、津波などが頻発し、「災害は忘れる前にやってくる」。

 これから迎える台風シーズンを前に、まず何をすべきか。今、このサイトを見たすぐ後で、居住地の自治体のハザードマップを確認するところから始めてほしい。

参考:国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」 ★サイトへはこちらからどうぞ  

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

地球温暖化の影響で台風や集中豪雨は増え、巨大地震も近いうちに起こると予測されています。日ごろからの備えや心構えが命を守ることにつながるといえるでしょう。
日本財団遺贈寄付サポートセンターは、遺産を災害復興支援など社会に役立てたいとお考えの方のご相談をお受けしております。ご相談は無料です。お気軽にご相談ください。
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