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終活日本経済新聞マネー報道グループ長 手塚 愛実「相続節税に逆風 暦年贈与の扱いが焦点に」
相続税を節税するために使われる手段に生前贈与があります。生前にできるだけ資産を子や孫に移し、いざ相続が発生したときに相続税が課税される資産の額を減らそうというものです。この生前贈与にここ数年、逆風が吹いています。
まず、2013年4月に始まった教育資金の一括贈与。贈与者(祖父母など)が30歳未満の受贈者(孫など)に教育資金を1人1500万円まで非課税で贈与でき、信託銀行などに開いた教育資金口座から受贈者が学校に入学したり、留学したりするたびに必要な金額を払い出すというものです。
2021年4月以降の贈与について、贈与者が死亡した場合、その時点で使い残している教育資金は受贈者が23歳未満は対象外などの例外はあるものの、原則、相続財産に加算されることになりました。
同様に住宅資金贈与の非課税贈与、結婚・子育て資金の非課税贈与についても、非課税限度額が縮小したり、適用要件が厳しくなったりする改正が続いています。
いずれもシニア層から子育て世代への所得移転を促す目的で導入されましたが、利用するのが富裕層に偏りがちで格差の固定を招くとの批判を受け、縮小してきた経緯があります。
贈与についてはさらに大きな逆風が噂されています。暦年贈与に対する規制強化の動きです。
暦年贈与とは1~12月の1年間に基礎控除である110万円以内にまでに贈与額を抑えれば、贈与税が発生しないことを活用した贈与です。贈与税は10~55%の超過累進税率なので、仮に年300万円を贈与すると、基礎控除の110万円を引いた190万円に10%の税率がかかり、19万円の贈与税を払えばいいということになります。
死亡前3年以内の贈与は相続財産に足し戻されるとはいえ、暦年贈与は生前に何度でもできるため、富裕層がこつこつと相続財産を減らせる「節税の王道」と目されてきました。2021年に暦年贈与で贈与税を申告した人は48万8000人と、2007年に比べて7割近く増えています。
しかしやはり、政府は格差の固定、拡大につながると見直しに動いています。2022年度税制改正大綱には具体的な見直し策は盛り込まれませんでしたが、「本格的な検討を進める」という文言が明記されました。今年末にまとまる2023年度大綱でどこまで踏み込んでくるのか、注目が集まっています。
7月10日の参院選で自民党は圧勝しました。岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」を掲げます。仮に「分配」をより重視した場合、富裕層の相続節税への風当たりはさらに強いものになりそうです。
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