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あんしんステージ法務・福祉事務所 代表 塩原 匡浩あなたが遺言するならどの形式が良いか?

あなたが遺言するならどの形式が良いか?

 ようやく緊急事態宣言が全国的に解除され、止まっていた時計の針が動き出したかの様な心持がします。緊急事態宣言は4月7日に東京や大阪など7都府県へ発令され、今回約50日間ぶりに発令地域が全国からなくなりました。安倍総理は記者会見で、「社会・経済活動を厳しく制限するのではなく、段階的にレベルを引き上げてコロナ時代の新たな日常を作り上げる」と強調しました。巷ではアフターコロナに備えるべきだとも言われますが、あなたにとって今回の出来事はどのような経験であったことでしょうか?もちろんウイズコロナとも言われるように、今後もコロナに罹患しないように注意しながらの生活は継続されることでしょう。そしてこれからの生活のことを、ニューノーマル(新しい生活習慣)とも表現され始めているようです。これをお読みのみなさまがニューノーマルのひとつの指針として、「遺言書」を活用しながら人生の羅針盤を打ち立て、活力ある日々を過ごされることを祈念いたします。今回は、遺言形式の基礎的内容を踏まえつつ、「あなたが遺言するならどの形式が良いか?」について述べてみたいと思います。


1.主な遺言形式は「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」
 まず知っておいて頂きたいのは、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」 の法的効力は同じだということです。ただし作成のプロセスや作成後の手続き等が異なります。「公正証書遺言」は公証人という法律実務経験の豊かな公的立場の方が作成し、その遺言の存在・内容を証明する形式の遺言です。一方「自筆証書遺言」は読んで字の如く、自分自身で作成する遺言のことです。今迄は自分で保管することがその前提でしたが、前回のコラムにあったように、2020年7月10日からは、「法務局における自筆証書遺言書保管制度」が始まりますので、自己完結での作成が前提の「自筆証書遺言」が自分に向いているという方は、そちらを視野に入れてご準備されるのが良いと思います。それでは具体的にその違いを見てみましょう。


2.公正証書遺言とは?
 公証役場で公証人に作成してもらう遺言のこと(民法 969条 )で、財産額に応じて公正証書作成手数料を公証役場に支払います。事前準備として遺言者が本人である証明等の為、印鑑証明書及び戸籍謄本・住民票等を揃えます。そして次に、遺言作成当日に遺言者の真意を正確に文章にまとめる為、2人(以上)の証人の立ち会いが必要です。その上で遺言者が述べた遺言の内容は、公証人によって筆記され、公証人が筆記したものを遺言者と証人に読み上げて閲覧がなされます。そして遺言者本人と証人の筆記内容を確認した後に署名捺印を行い、法律実務家の公証人が作成した旨を付記して署名捺印する手順を踏むので、紛争防止に役立つ形式であると言われます。公正証書遺言は3通作成されますが、「原本」は公証役場に保管される為、紛失や偽造される心配はありません。そして、遺言者には「正本」と「謄本」が渡されますので、遺言執行人がいる場合は「正本」を渡しておくと良いでしょう。また万一「正本」もしくは「謄本」を紛失しても、再交付を受けることができますので安心です。この「公正証書遺言」の大きなメリットのひとつは、相続発生(遺言者死亡)時に効力が発し、相続手続きを即時行うことが可能となることです。


3.自筆証書遺言とは?
 「本文・付言」は自筆(代筆不可)で書き上げること(民法第968条)と、4つの要件が必要となります。作成費用は掛かりませんが、財産目録や不動産等に関しても一字一句間違わず記載することが遺言作成のハードルを上げる一因でした。しかし民法改正による方式緩和により、財産目録や不動産登記簿謄本等の写しの添付が可能となりました。また「自筆証書遺言」で相続手続きを行う際は「公正証書遺言」とは違い、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。遺言の効力発生時点は遺言者(被相続人)の死後であり、本人によって書かれたのか否かを確かめる術がなかった為です。しかし、「法務局における自筆証書遺言書保管制度」では遺言者本人が法務局に出向いて手続きをするので、「検認」と「証人」が不要です。手数料は掛かりますが「公正証書遺言」に比べると安価なので、「自筆証書遺言」は我々に身近でとても使いやすい制度になったとも言えるでしょう。しかし法務局では様式等の確認は行いますが、遺言内容に関しては自己責任なので、紛争防止の観点からは法律の専門家に事前確認を受ける事も必要となるでしょう。

 私が提唱する「9マス遺言」も「自筆証書遺言」の形式のひとつであり、簡単に脳内整理と人生の棚卸しが出来て法的効力のある究極の便利ツールですが、こちらはまた次回以降にご紹介したいと思います。


【自筆証書遺言の4つの作成要件】


① 全文自書で書くこと
 全文とは実質的内容部分の「本文」にあたる部分のことです。自書が要求される理由は筆跡によって本人が書いたものとして判定でき、自筆ということが分かれば遺言の内容が遺言者の真意であると推測できるからです。つまりWord等で作成された遺言は無効となります。また筆記用具は原則自由なので鉛筆で作成しても要件を満たしますが、書き換えられたり消えてしまう可能性もあり、なるべく避けるべきです。


② 日付を自書すること
 遺言書が複数ある場合、原則一番新しい日付のものが有効となります。また遺言作成時に作成者が遺言を作成する能力があったのかを判定するために、日付の自書が要求されているのです。年月のみで日付のない場合、もしくは、○年○月吉日などの表現では無効となってしまうので注意しましょう。


③ 氏名を自書すること
 氏名の自書が要求されるのは遺言の作成者を明確にし、誰の遺言なのかを明確するためです。また自筆で記載することによって、遺言作成者本人の作成意思を証明します。


④ 捺印すること
 認印でも法的効力はありますが、実印を捺印して印鑑証明書を添付するのが好ましいでしょう。


4.ニューノーマル(新しい生活習慣)に「自筆証書遺言」習慣を取り入れよう
 今回のコロナ禍では、現代に生きる誰もが自らの生命の危機を肌で感じた事でしょう。約50日間に及ぶ巣ごもり生活を通じて、自分のこと・大切な人のこと・これから如何に生きるべきか等々、様々に思索を巡らしたのではないでしょうか。私が感じたのは、「命の重さ」と「自分はこの宇宙船地球号の中で生かされている」という感謝の想いでした。そんな未体験な出来事が続く時代の中で、自分と向き合い「本当に大切なものは何か?」を模索する動きが徐々に広まりつつあります。この機会をチャンスと捉え、新たに生まれ変わった「自筆証書遺言」習慣を、あなたのニューノーマルに取り入れてみては如何でしょうか。

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

 遺言書は、いざ書こうと思うとどこから手をつけていいのか戸惑うものですが、自筆証書遺言書、公正証書遺言書の特色を知ることで、ご自身に合う方法で書かれるのがよいようです。ご自身の気持ちを遺言書として遺しておくことは、あなた自身のためだけでなく、遺される家族のためでもあります。そして遺言書であなたの「思い」を未来に繋ぐことができます。日本財団遺贈寄付サポートセンターは、遺言書であなたの財産を未来の社会貢献に活用したい、遺贈をしたいと考える方のご相談をお受けしています。お問い合わせ、資料請求はHPのお問い合わせ欄からどうぞ。

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