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あんしんステージ法務・福祉事務所 代表 塩原 匡浩「遺言書保管制度」よくある質問について

「遺言書保管制度」よくある質問について

 法務局での「自筆証書遺言書保管制度」が始まって、すでに2箇月以上が経過しました。これをお読みのあなたは、もう遺言体験をされましたでしょうか?それともまだ検討中でしょうか。新制度の開始当初はどこの法務局でも予約待ちが見られたようですが、最近は混雑も緩和されて予約しやすくなってきた様です。ご参考までに東京法務局(九段)の「遺言書保管手続予約サービス」のページにアクセスしてみると、比較的簡単に予約できるのがわかります。この状況を鑑みるに状況が落ち着いてきたのはよいとしても、遺言書の保管ニーズが想定より低かったのか、はたまた遺言書作成ニーズ自体が少なかったのか、単に法務省の告知不足による認知度が低いのかは現時点で判別できません。


 そこで今回のコラムでは、この2箇月間の自筆証書遺言書保管制度手続きプロセスを見た上で、多くの遺言作成者等が疑問に思っていた質問をいくつか取り上げ、その回答を確認しながら自筆証書遺言書保管制度の問題点を検証してみたいと思います。質問は内容を厳選して4問として、それぞれについて法務省ホームページやパンフレットを参考にしながら現実に即して回答を作成しています。

【東京法務局 自筆証書遺言書保管制度直近の予約状況について】

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質問1遺言書の書き方がよくわからないのですが、法務局(遺言書保管所)で遺言書の書き方を教えてもらうことはできますか?また遺言書の書式に9マス遺言(遺言書用紙に枠がある)を使いたいのですが、申請可能でしょうか?

回答1遺言書の作成に関するご相談には、残念ながら一切応じられません。遺言書の様式については、法務省ホームページや「自筆証書遺言書保管制度のご案内」パンフレット等の注意事項をご覧いただき、あらかじめご自身で作成の上、法務局に申請頂くようお願いします。また遺言書の書式に9マスが入っていたとしても、その模様が文字の判別に支障がないものであれば申請可能です。

質問2保管の申請をしたいのですが、遺言者本人が病気のため法務局(遺言書保管所)に訪問できません。その場合はどうしたらよいですか?もしくは代理申請は出来ますか?

回答2この自筆証書遺言書保管制度は本人出頭義務を課していることから、遺言者本人が法務局(遺言書保管所)にて直接手続きをすることが要件となります。もし本人が出頭できない場合は、本制度の活用は出来ません。しかし付添人が本人介助の為に同伴して頂くことは差し支えありません。

質問3遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けたことを家族に伝えておいた方がよいですか?またその際は「保管証」も家族に預けたほうがよいですか?

回答3法務局(遺言書保管所)に預けたことをご家族(相続人等と成り得る方)に伝えておいていただくと、いざ相続が開始されることになった時には、ご家族等がスムーズに「遺言書情報証明書」の請求手続等を行うことが出来ます。その際は「保管証」を利用すると確実に手続きが出来ます。万が一「保管証」を紛失した場合は、「保管証」の再発行は出来ませんが、たとえ「保管証」が無かったとしても手続き自体は可能ですのでご安心ください。

質問4自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選べばよいですか?

回答4法務省民事局発行の「自筆証書遺言書保管制度のご案内」パンフレットを見ると、以下のように整理され、結論として「なおどちらを選ぶべきかの最終判断はご自身で決めて頂くものであり、法務局(遺言書保管所)ではお答えできません」と書かれています。それを踏まえた上で自筆証書遺言と公正証書遺言について、作成方法・保管方法・その他について記載してみました。それぞれの特徴を見比べてみましょう。

1.作成方法

(1)自筆証書遺言(民法968条)

①遺言者本人が遺言書の全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自書さえできれば一人で作成することが出来ます。

②遺言者自身で作成するため費用はあまりかかりません。

(2)公正証書遺言(民法969条)

①法律専門家である公証人の関与の下、2名以上の証人が立ち会って行う遺言で、公証人は遺言能力や遺言内容の有効性の確認、遺言内容についての助言を行います。

②財産の価格に応じた手数料がかかります。

③遺言者が病気等で公証役場に出向けない場合は、公証人が出張して作成することができます。

2.保管方法 

(1)自筆証書遺言(民法968条)

①遺言者本人の判断で、適宜の方法(貸金庫もしくは自宅等)により保管することになりますが、自筆証書遺言書保管制度を活用すれば、法務局(遺言書保管所)に預けることが出来ます。

(2)公正証書遺言(民法969条)

①原本は公証役場において厳重に保管されます。

3.その他 

(1)自筆証書遺言(民法968条)

①相続開始後、相続人等が家庭裁判所に検認を請求する必要がありますが、自筆証書遺言書保管制度で保管された遺言書は検認が不要です。

(2)公正証書遺言(民法969条)

①検認は不要です。

 よくある質問とその回答をご覧になってどう感じられますでしょうか?この「読み物」欄を読まれているみなさんであれば、さして難しい内容とは感じなかったのではないでしょうか。それは自分事として「遺言書」を捉えていることと、ある意味人生の覚悟をお持ちになって日々を生きているからだと思います。あなたにとってもしこれらの内容が難解だと思われたとしたら、「遺言書」作成が自分事となっていない可能性があると私は思います。しかしもうすでにお気づきのように、「遺言書」を作成するには人生でのタイミングがあり、決して年配者だとか年齢が若いとか、お金持ちだとかお金持ちでないから等が、遺言に向き合おうとしない理由には成り得ないと私の経験から感じます。

 日本政府はコロナ禍がひと段落したことを前提に経済を優先させ、Go To トラベル キャンペーン適用範囲を東京都にまで拡大させました。しかし飲食店や民間中小企業等の経営状況の実体は、コロナ禍の影響が和らぐどころか本格的ダメージが露見してくるのは、これからであるという意見も散見されます。いま現在ですら「漠然とした不安を感じる」と言うのが、我々に共通した想いではないでしょうか。どんな状況に置かれたとしてもまずは「遺言」作成を行っておくこと。それがあなたの想いや生き様を大切な人へと遺し、家族と財産を守る基本となるのだと、いま一度あなたにお伝えしたいと思うのです。

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

 遺言書を作成される方の多くは、自分の人生を振り返り人生の棚卸しをしてから、自分の思いを遺言書に遺されます。「自筆遺言書保管制度」は、遺言書であなたの「思い」を未来に繋ぐことを促してくれる貴重な機会です。この制度を有効に活用するためには、正しく遺言書を書いておくことが必要です。
 日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺言書であなたの財産を未来のために遺したい、遺贈をしたいと考える方のご相談をお受けしています。お問い合わせ、資料請求はHPのお問い合わせ欄からどうぞ。お待ちしております。

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