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日本経済新聞編集委員 辻本 浩子認知症への備えを早く前向きに

認知症への備えを早く前向きに

 有吉佐和子さんの小説「恍惚(こうこつ)の人」がベストセラーになったのは、1972年のことだ。認知症の義父を介護する女性の姿を描き、大きな反響を巻き起こした。当時はまだ介護保険制度もなく、認知症への社会の理解も乏しい。本人や家族たちだけで、対応を考えなければならなかった。
 それから約50年。状況は大きく変わった。認知症の人が暮らしやすい社会にしていくことは、政府が掲げる大きな目標だ。官民あげて様々な対策が打ち出されている。2025年には高齢者の5人に1人、約700万人が認知症となるとの推計もある。どんなサポート体制があるのか。個人としても早くから情報を集め、備えておくことは、将来の安心につながる。

 備えのひとつとなるのが、成年後見制度だ。2000年に介護保険制度ができたときに、高齢者を支える2本柱として同時に導入された。後見人が本人に代わって財産管理などを行う公的な制度だ。
後見人をどう選ぶかは、大きくわけて2つある。家庭裁判所が決める「法定後見」と、高齢者自身が元気なうちに誰に何を委ねるかを決める「任意後見」だ。任意後見は自分で早めに取り組めるものだけに、選択肢としてもっと検討されていいだろう。

 備えの大切さは、金融界からも提起されている。全国銀行協会は今年、認知症になった人との取引についての考え方をまとめた。本人が認知症の場合、預金は凍結されるケースも多いためだ。
 今回も、成年後見制度の利用を求めるのが基本とした。今はまだ利用が少ないことなどから、本人の医療費に使う場合などに限って代理権のない親族らによる引き出しを認めるとした。とはいえ、あくまで限定的な扱いだ。
 こうした指針が出たことを、金融機関との取引や財産管理をどうするか、一人ひとりが改めて考えるきっかけにしたい。銀行のなかには、親族などの代理人を元気なうちに事前に届け出ておけば、認知症になったときに預金の引き出しなどを代行してもらえるサービスを始めるところもある。信託の活用といった方法もある。自分にあったものを探りたい。

 認知症は決して、特別なことではない。「終活」というと、遺言や遺産相続、葬儀など、亡くなってからのことを決めておくイメージがあるかもしれない。しかし、高齢期を大切に過ごせるよう準備することも、終活の大切な役割だ。認知症への備えを、そのメニューのひとつに加えたい。

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