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終活日本経済新聞編集委員 辻本 浩子「デジタル遺品」 早めの備え
〝自粛の夏〟が再びやってきた。おりからの東京五輪も、だれも見にいくことはできない。そもそも日々の暮らしから、外出を控え、できるだけ自宅で過ごしている人は多いだろう。その分、身近になったのが、インターネットのサービスだ。
買い物から、音楽・映像配信サービス、金融取引まで、自宅にいながらにして多くのことができる。総務省の「通信利用動向調査」によると、インターネットの利用状況(2020年)は60代で約8割、70代で約6割にのぼる。80代でも4人に1人を超えている。このコラムをご覧になっている方々も、普段からパソコンやスマホなどデジタル機器に親しんでいる方だろう。
そんなデジタルとネットの時代だからこそ、目を向けたいのが「デジタル遺品」だ。もしものさいにパソコンやスマホ内に残される各種データや、ネット上の登録情報などを指す。ロックを解除するパスワードなどが分からないと、中身を確認することが難しい。
とりわけ問題になりやすいのは、ネット銀行やネット証券などを利用している場合だ。通帳や郵便物などがあれば遺族らへのヒントになるが、ネットだとモノが残っていないことも多い。取引実態を把握するのは簡単ではない。
それだけに、事前の備えが一層、重要になる。
ネットで取引しているならば、例えばそのことを家族らに伝え、IDやパスワードなどを安全に残す方法などを考えておく必要があろう。
デジタル遺品には、写真やメール、日記などのデータも含まれる。残したくないものがあるなら、事前に自分で処分しておくか、信頼できる人に頼んでおくなどの方法がある。
SNSなどのアカウントが、利用者が亡くなったあとどうなるかは、運営会社によってさまざまだ。生前に管理する人を指定しておき「追悼アカウント」にできるサービスもある。
デジタル遺品への備えは、なにも亡くなった後のためとは限らない。
あまり使っていないサービスなどを解約し、写真や文書のデータなども整理すれば、日々の暮らしも快適になる。
終活はとにかく幅広い。まずは身近なデジタルの棚卸しから入ってみるのも、ひとつの方法かもしれない。
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