読み物
寄付日本経済新聞編集委員 山口 聡増税必至の時代に「寄付」を考えるということ
コロナ禍が治まる気配を見せない。このために多くの人が健康面や経済面で苦しい状況に陥っている。政府はこの状況を打開するために、医療機関への補助、仕事がなくなった人への手当、お店への休業補償など様々な対策を打ち出している。昨年度(2020年度)は国民1人当たり10万円の給付もあった。これらには効率的でなかったり、まだ足りなかったりなどと様々な批判があるものの、間違いなく言えることが一つある。莫大なお金がかかっているということだ。
それにつれ政府予算が膨張している。20年度当初の政府予算は102兆円だったが、年度途中の補正予算でどんどん上積みされ、最終的に20年度はおよそ170兆円規模の予算となった。21年度も当初予算規模は106兆円だが、今後上積みされるのは間違いないだろう。
この上積みの財源はすべて国債だ。そもそも当初予算の段階で国の収入の約4割を国債に頼っている。要するに借金まみれなのだ。コロナ禍の前から日本の財政状況は先進国の中で最悪だった。国と地方自治体の借金残高(長期債務残高)は21年度末で1212兆円に達するとされる。今後、東京五輪・パラリンピックの赤字補塡も必要になる。11年の東日本大震災の復興費もまだかかる。
一定条件下で国の債務は積み上がっても問題ないとする説もあるが、常識的には債務の膨張を抑え、財政を健全化する必要がある。そうなると行き着く先は新たな財源の確保と歳出の削減しかない。新たな財源とは、取りも直さず増税だ。
増税と聞いて、まず思い浮かぶのは消費税という人が多いかもしれない。消費税は増え続ける社会保障費を賄うために導入された税金なので、その税率はまだ上がってもおかしくはない。しかし国民からの評判が悪く、政治家は今の10%からさらに引き上げる決断をなかなかできそうにない。となると、個人関係では所得税や、相続税などの資産課税の強化が課題になるだろう。所得や資産がちょっと多いといった人への増税なら広く影響が出る消費税よりは決断しやすい。
実はここからが本題。納税は社会を維持していくための意義のある行為であり、必要不可欠なものだ。ただ問題はそのお金がどこでどう使われ、本当に社会に役立っているのかがわかりにくいことにある。その点、寄付はよりよい社会を築くために自分が本当に必要だと思うところにピンポイントで資金を提供することができる。一定条件はあるものの、寄付には税制面での優遇措置もあり、寄付すると損するというものでもない、ざっくり言えば、資金面で社会に貢献するには納税する方法と寄付する方法の2つがある。これからの課税強化時代に、同じように自分のお金を社会に提供するのならば、どの手法が一番しっくりするか、納税は大切だが、それだけでいいのか、考えてもよさそうだ。
日本財団が提唱する、遺贈という名の選択
日本財団遺贈寄付サポートセンターは、遺贈寄付に関心のある方を対象にご相談をお受けしております。ご相談は無料です。終活周りの情報提供もしておりますので、お気軽にご相談ください。