読み物

日本経済新聞編集委員 辻本 浩子偉人たちからの未来への遺言

偉人たちからの未来への遺言

 遺言。それは未来へのメッセージだ。身近な人へ、これからの社会へ。「こうあってほしい」という思いがこもる。とりわけ歴史上の著名人、有名人では、後の世界に影響を与えることも少なくない。
 古代の英雄、アレクサンドロス大王の遺言も、そのひとつだろう。彼は東西世界の融合という理想をいだき、地中海からインダス川流域にまでいたる大帝国を築いた人物だ。
 紀元前323年、病に倒れて、帰らぬ人になる。広大なこの帝国をだれに委ねるのか。「最強のものに」。彼はこう言い残したとされる。
 自分がやり残したことを継いでもらいたかったのだろう。実際にはここから長年にわたる後継者争いが起き、国は分裂してしまった。遺言のあいまいさも一因かもしれない。ただ、東西の融合により生まれた文化は、その後も各地に花咲き続けた。そういう意味では、すばらしい遺産は残った。
 一方、自分の思いをより具体的に遺言で示した人もいる。「ノーベル賞」を生んだスウェーデンの科学者、アルフレッド・ノーベルだ。ダイナマイトの開発でしられる彼は、莫大な財産を基金にして賞に使うよう、遺書に残した。
 この背景として、意外なエピソードが残っている。ノーベルの兄が死去したさい、なぜか「ダイナマイトの発明者が亡くなった」と、ノーベル本人と勘違いした報道があったのだ。なかには彼の発明に厳しい目を向けるものもあった。
 ダイナマイトは産業用としてだけでなく、兵器としても使われた。彼自身、そのことは想定していただろうが、実際の使われぶりは彼の思いを越えていただろう。
 彼が書き残したノーベル賞の対象は、自然科学の3部門と、文学賞、平和賞だ。「人類に最も貢献した人」に贈られる。ダイナマイトが戦争に使われたからこそ、彼は未来の人々のなかに希望を見ていたのではないだろうか。
 遺言とそれにともなう遺産の残し方は、人それぞれだ。
 自分がやってきたこと、好きだったこと。それをさらに広げ、発展させてほしい。そういうやり方もあるだろう。
 反対に、自分ができなかったこと、やる機会が無かったこと。そこに目を向ける残し方もあろう。
 自分は未来になにを託したいのか。大事なのは自分の「思い」だ。10月はノーベル賞の発表シーズンだ。12月の授賞式までさまざまな話題が続く。内なる思いを確認してみるのに、いいタイミングかもしれない。

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

 日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺産を社会に役立てたいとお考えの方に、遺言書の書き方のご相談も承っております。「遺言書は書いておいた方が良いけれど、難しいそうだから」となかなか手が付けられない、また、いざ取り掛かろうとしたときに「何から始めれば良いかわからない」という方、どうぞお気軽にご相談ください。相談員が、ご不明ご不安な事項をお伺いし、丁寧に対応させていただきます。

遺贈について詳しく知る

未来への贈り物、遺贈未来への贈り物、遺贈
受付時間 9:00-17:00 0120-331-531
  • 資料請求
  • お問合せ