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立教大学社会デザイン研究所 星野 哲終活万華鏡 -8 -

終活万華鏡 -8 -

 前回に続き、遺贈寄付が社会にとって「よい」ことがテーマです。大きく2つあるといった、残りの1つについて考えます。
 それは、お金の循環ルートを変えられることです。
 地方から東京や大阪など大都市へ、という大きな人口の流れが戦後ほぼ一貫して続いています。これに伴い相続財産も都市、中でも東京への一極集中が起きているのです。
 都市に出たのは主に若い世代です。親世代は地方に住み続けました。その親世代が亡くなると、相続人が都市で暮らしているケースが増えているため、相続財産が地方から都市へと流出する一極集中現象が起きてしまうのです。これからも東京など大都市部の相続財産は増え続ける一方、地方では減っていくと予測されています。
 たとえば、「大和総研調査季報2017年夏季号」に掲載された論文「相続資産の移転と地域のリテール金融市場の将来」では、2016年から25年までの推計として、首都圏や京都府・大阪府・兵庫県などを除く37道県で相続資産の流出が発生すると予測しています。

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(「大和総研調査季報2017年夏季号」より)

 地方で暮らしながら生涯かけて形成した財産が遺産となった瞬間、地域で使われることなく都市部に移るのです。流出を防ぎ、地域のためにお金を活かしたいと考えれば、地域で活動するさまざまなNPOや自治体、地元の学校、郷土博物館などに遺産の一部でも遺贈寄付するという方法が最もわかりやすい手段でしょう。地域のお金を地域で活かす「お金の地産地消」です。
 こうした地域間のバランスだけではなく、遺贈寄付によってもう一つお金の循環ルートを変えることができます。世代間のお金の流れです。
 金融庁が2018年にまとめた「高齢社会における金融サービスのあり方(中間的なとりまとめ)」によると、退職世代(60歳以上)が保有する金融資産が全金融資産に占める割合は、1999年の47.4%から2014年には65.7%に上昇、2035年には70.6%に達すると推計されています。高齢者が保有する資産がウエイトを増しています。
 いま「人生百年時代」といわれるほど平均寿命が延び、被相続人が亡くなったとき、相続人である子ども世代もまた高齢者になっているという事態が増えています。いわゆる「老老相続」になってきています。
 一般に高齢者は若い世代に比べて消費活動が活発ではなく、老後の不安から手元に財産は貯めこむ傾向が強いといわれます。老老相続された財産は、社会にあまり循環することなく、貯めこまれたまま、さらに新たな老老相続へとつながっていく可能性があるのです。お金は循環してこそ新たな価値を社会に生み出します。遺贈寄付によって、遺産の一部でも社会に循環させることの意義は今後、ますます大きくなっていくと考えます。

日本財団が提唱する、遺贈という名の選択

 未来の誰かを笑顔にすること、それができるのが遺贈です。日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、その遺贈の実現のためのご相談をお受けしております。どんな些細なことでも結構です。ご遠慮なくお問合せください。

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