読み物
終活立教大学社会デザイン研究所 星野 哲終活万華鏡 -9 -
前回までご紹介した遺贈寄付は、意識を社会に向け、いまを生きる人たちだけでなく、次世代の人たちともつながるという意味でまさに「集活」です。もちろん遺贈寄付だけが集活ではありません。交友関係を生じる、縁を結ぶ活動はみな集活です。今回はお墓をきっかけとした縁づくりを紹介します。
「墓友」という言葉をご存知でしょうか? 「はかとも」と読みます。認定NPO法人「エンディングセンター」が発信して広まった言葉です。
核家族の増加、結婚しない選択や子どもを持たない選択をする人が多くなったいま、家族の姿や機能が変化しています。それに伴って墓の姿は大きく変わりました。かつては「星野家之墓」のようなイエの存続を前提とした「家墓」が主流でしたが、墓を守る跡継ぎがいない人が多くなったいま、継承を前提としない墓が次々に生まれています。永代供養墓、共同墓、合祀墓、樹木葬...。そんな墓の記事や宣伝を見聞きした人も多いはずです。家墓を「墓じまい」して、そうした跡継ぎ不要の墓を利用する人が増えているのです。
エンディングセンターが運営する「桜葬」(東京・町田市と大阪・高槻市)という樹木葬もそうした墓の一つです。桜葬を利用する会員たちが生前から交流し、時に助け合いながら、いつかは同じ墓所で眠る。墓を核としたそんな関係性を、エンディングセンター理事長で元東洋大学教授の井上治代さんは「墓友」と名付けたのです。
井上さんは活動の理念として「血縁から結縁へ」を掲げます。血縁のように自分で選ぶことができないうえに、時に「しがらみ」となるような強固な関係性ではなく、自らの意思で選んでつながる、緩やかな共同性が墓友の特色だといいます。
具体的な活動の象徴が「もう一つの我が家」です。町田市の桜葬がある墓園近くの民家を使い、希望者が一緒に料理をしてご飯を食べたり、おしゃべりしたり、読書活動や健康維持活動などをしたりしています。時には先に逝った仲間のことを自然と偲ぶ場にもなります。ある参加者は「自分もこうして思い出してもらえる、しのんでもらえると思うと、なんだか安心します」と話してくれました。
また、エンディングセンターでは会員向けに、入院や施設入所の際に必要な身元保証や付き添い、亡くなった後の葬儀や死後事務など、従来は「家族がすることが当たり前」とされていたサポートも必要に応じて提供しています。墓友同士、支え合うのです。
こうした墓をきっかけとする関係性はなにも桜葬だけではありません。たとえば、永代供養墓の先駆けといわれる新潟市・妙光寺の「安穏廟」利用者も同様に、希望者は生前からの交流を積み重ねていますし、東京・巣鴨にある共同墓「もやいの碑」でも旅行会などを通じて親交を深めています。
死に向きあうと「もうすべて終わり」と考える人もいますが、墓友のように、死に向きあうことで生まれる関係性があるのです。最期まで縁は結べる。私はそう考えますし、そうした縁がある方が豊かな老後、人生の最終盤を過すことができるのではないでしょうか。
日本財団が提唱する、遺贈という名の選択
終活の中で、遺産相続に関する話題が増えてきているようです。自分の遺す財産を誰にどのような形で渡すのか決めることは、自分の考えを確認することにもなります。遺し方を決め、遺言書に書き記すことで、遺す方も遺される方も安心して過ごすことができます。
日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺言書で自分の財産を社会貢献のために使いたいという方に、終活周りの情報提供もしております。お気軽にご相談ください。