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立教大学社会デザイン研究所 星野 哲終活万華鏡 -11 -

終活万華鏡 -11 -

 前回、生前契約事業の不安点を指摘しました。様々なプレーヤーが参入していますが、いま注目されているのは、社会福祉協議会(社協)や自治体による事業です。いずれも信頼度が高い団体であることはいうまでもありません。

 社協の事業は福岡市や高知市、京都市、名古屋市のほか東京都足立区や文京区などで行われています。葬儀や家財処分などの死後事務がメインですが、見守りや成年後見と組み合わせることもあります。所得制限や近親者の有無など、社協ごとに利用条件がありますし、料金体系もまちまちです。

 たとえば、20195月に事業を始めた文京区社協の「文京ユアストーリー」。対象者は区内に住む70歳以上の人で、近くに頼れる親族がおらず、生活保護を受けていないことなどが条件です。契約時に入会金15000円と、預託金を50万円以上、場合によっては葬儀費用や家財処分費も社協に預けます。生前は定期連絡や訪問、入院時サポートもあり、判断能力や身体能力が衰えた場合は、社協が弁護士や医療・介護職らと連携しながら、可能な限り本人の意向に沿って生活をサポートします。亡くなった後は、あらかじめ契約した葬儀社による葬儀から埋葬までのサポートを社協が行い、死後事務を担ってくれます。

 福岡市社協が行っている事業の一つでは、預託金がない代わりに少額短期保険を活用して死亡時の保険金で費用を賄う方法を導入しています。

 社協は公的性格の強い団体ですから、安心感はあります。民間に比べて利用料も低めです。ただし、なんでも希望が叶うかといえば、民間ほど柔軟には対応してもらえないこともあります。

 自治体も動き出しています。神奈川県横須賀市が185月に始めた「終活情報登録伝達事業」(通称「わたしの終活登録」)はその先駆けとして知られます。墓の所在地や遺言書の保管場所、緊急時の連絡先などの情報を希望者に登録してもらい、市が管理します。登録できる項目は「緊急連絡先」「支援事業所や終活サークル等の地域コミュニティー」「葬儀・納骨・遺品整理・献体の登録先」など11項目。登録したい情報だけを記載し、何度でも変更や追加が可能です。子どもや認知症の人でも、親や後見人らが代理で登録できる項目もあります。

 事業を始めた背景には、身元は分かっているにもかかわらず、引き取り手のない「無縁仏」として扱われるケースの増加があります。たとえ生前に民間のサポート事業と契約していたとしても、あるいは地域活動などのコミュニティーに属していたとしても、そのこと自体が死後、肝心な相手に伝わらなければ、生かしようもありません。連絡すべき相手さえ分かれば無縁遺骨になる危険性は減るのではないか、という発想から始めたそうです。

 横須賀市ではこの事業に先立つ157月から「エンディングプラン・サポート事業」も実施しています。月収18万円以下などの条件を満たす、一人暮らしの低所得高齢者を対象にした事業で、利用者は市内の協力葬儀社と死後事務委任契約を結び、25万円(生活保護受給者は5万円)を葬儀社にあらかじめ預けます。市と業者は利用者が亡くなるまで訪問などで安否確認をし、死後は納骨まで市と業者が責任をもつことにしています。

 横須賀市の試みは注目され、いまでは神奈川県大和市や鎌倉市、綾瀬市、静岡県熱海市、埼玉県入間市、兵庫県高砂市などが類似の事業を実施しています。

 生前契約とは違いますが、遺族のために行政の窓口をワンストップで対応できるようにする動きも広まってきましたので最後に紹介しておきます。通称「おくやみコーナー」といいます。死亡届から始まり、世帯主変更届や国民健康保険の手続き、税や墓地に関する手続き、介護サービスの廃止など、遺族は役所内をあちこち手続きに回らなければなりません。それをできるだけ一元化して対応できるようにしようというのです。

 217月にコーナーを開設した東京都豊島区では同時に、何をする必要があるのかなどをまとめた「おくやみ手続きガイド」を作成。少しでも手続きをスムーズに進めてもらおうと努力しています。身内の死で混乱している遺族には、せめてもの支えとなるよいサポートだと思います。

 国も「おくやみコーナー」設置のためのガイドラインをネット上に公開し、開設を後押ししています。18年度には全国で6自治体しか設置はありませんでしたが、20年度には169に急増しています。皆さんがお住まいの自治体にもあれば、いざという時にきっと助かるはずです。尋ねてみてはいかがでしょう。

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