読み物
老後日本経済新聞編集委員 辻本浩子現金給付は朗報か
お金は大切だ。日々の暮らしに欠かせないものではある。
しかし、お金はすべてではない。お金をもらうより役立つこともあるからだ。
こんな話をするのは、いま改めて「給付金」をめぐる議論が政府与党内で盛んなためだ。年金受給者らに5千円を配る、という話がまず浮上した。どう決着するにせよ、「お金を配る」というのはどの時代であっても、好まれやすい政策ではある。
ただ、現金給付は少額、かつ一時的なものだ。みんなが薄く広くもらっても、それぞれの暮らしに与えるプラスはわずかになる。本当に必要な人に重点を絞る。浮いた分をほかの施策に回す。これらのほうが有効なことは少なくない。
長引くコロナは、暮らしに影を落としている。
福祉や健康づくりのサービスを充実させる。孤独に陥らないよう交流の場を増やす。働きたい人向けには就労支援に力を入れる。こうしたサービスやノウハウ提供は、大きな支えになるだろう。めいめいに現金を渡すのではなく、社会でまとめて使うからこそできる対策だ。
いい先例といえるのが、介護保険制度だ。当初から給付を介護サービスの現物に絞り、現金での給付をしてこなかった。だからこそさまざまなサービスが育ち、サービスをうまく使って暮らすことが「当たり前」になった。
人に魚をあげたら、1日で食べて終わってしまう。釣りの仕方を教えれば、ずっと魚を獲って食べていける。そんな古い格言がある。
お金も同じだ。どうすれば1日限りではなく、長く役立たせることができるか。真に生きたかたちで使うのには、工夫がいる。
納税者として、有権者として、政府がどうお金を使っていくかをみるのは大事だろう。
そしてまた、どこかに自分のお金を寄付しようと思っているのならば......。どのような考えのもと、どう使われていくのか。その団体の志をしっかりと見守りたい。
日本財団が提唱する、遺贈という名の選択
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