読み物
老後日本経済新聞編集委員 山口 聡「介護問題はとにかく相談を」
ある団体から毎週、介護・福祉情報についてのニューズ・レターが届く。これを見て気持ちが沈むのは、ほぼ毎週に近いぐらい全国のどこかで介護殺人やそれに近い事件が起こっていることだ。介護に疲れ果て、今後を悲観し、夫婦間や親子間で悲劇が起こっている。
かつて介護は各家庭のプライベートな問題だった。家の中に介護が必要な人がいることを近所の人にすら教えないことがあった。周りの誰にも助けを求めることができず、家族が追い詰められ、事件が起こっていた。3世代同居が当たり前という時代ならば、介護を担う人が複数いたが、核家族化が進むと、だれか1人に負担が集中するようにもなっていた。
このままではだめだということで、介護を社会化しようとの議論が起こる。そして2000年から公的な介護保険制度がスタートした。外部のサービスを使うことで、介護が必要な本人にとっても、その家族にとってもよりよい状態をつくり出すことを狙った。
それから20年以上の歳月がたち、今、多くの人が気兼ねなく外部の介護サービスを使っている。「介護の社会化」という大きな目的はほぼ達成できているように見える。しかし、完全ではない。他人に頼ることを嫌がる人や遠慮する人が今もいる。頼ろうとしたものの、いやな思いをしてあきらめた人や、そもそも頼れることを知らない人もいる。
知らない人には周りの人がお節介でも教えてあげたり、行政に連絡してあげたりする必要がある。嫌がる人や遠慮する人には根気よく説得するしかないだろう。介護サービスを提供する人たちは、プロである。嫌がる要介護者や家族の扱いには慣れている。プロに相談さえできれば、なんとかなるケースも多い。
ただプロとは言え、人と人の間には相性がある。最初の話し合いで嫌だと思うと、その後はもうまったく進展しないということもある。そういうときは相談相手を変えてみてはどうだろう。介護の関係で家族や本人がまず相談するのは「地域包括支援センター」と呼ばれる組織であることが多いはずだが、記者の個人的な経験からも、取材上の経験からもそういうところには親身になってくれるスタッフが必ずいる。
正直に話して担当者を変えてもらったり、担当者がいないときに他の人に相談してみたり、臨機応変に臨みたい。一番大事なことは孤立してしまわないことだ。行政や専門家・専門組織とつながり続けることだ。(了)
日本財団が提唱する、遺贈という名の選択
日本財団遺贈寄付サポートセンターでは、遺産を社会に役立てたいとお考えの方に、遺言書の書き方のご相談も承っております。「遺言書は書いておいた方が良いけれど、難しいそうだから」となかなか手が付けられない、また、いざ取り掛かろうとしたときに「何から始めれば良いかわからない」という方、どうぞお気軽にご相談ください。相談員が、ご不明ご不安な事項をお伺いし、丁寧に対応させていただきます。