センターニュース

 こんにちは、遺贈コンサルタントの木下です。

 5月の最終日曜日、夢の奨学金事業に寄付をしてくださった匿名の寄付者とそのご寄付を受けることになった奨学生のI君をお引き合わせしました。夢の奨学金事業とは養護施設出身者への進学支援を行う日本財団の国内支援開発チームが取り組む事業です。このたびの寄付者は当初、遺贈のご相談でお問合せくださったのですが、お話しするうちに生前に寄付しておきたい、子供に喜んでもらいたいと、1千万円をこの事業にご寄付くださいました。

 今年89歳になられた寄付者の女性は、ご自分の寄付がI君の将来に託されたことを目の前で確認され、嬉しそうに微笑まれ、得心されたようでした。この女性は、ご自分の若い頃は戦争の時代で思う存分の勉強をすることは憚られた、だから自分の財産は教育の機会に恵まれない子供の役に立ててもらえれば、と日本財団夢の奨学金事業に寄付をされました。「もう、今日会うのは最後かもしれないから」と、寄付者の女性はI君に亡くなったご主人の写真を見せて、「寄付したお金は主人が稼いだものだから貴方にも見せておきたいと思って」と説明されました。今日のこの日を彼女はどんなにか楽しみにしていらしたことでしょうか。I君の将来を楽しみに、「これからの生きる目的ができた」と仰った彼女の言葉が印象に残りました。

 I君はとても好感の持てる青年で、21歳という若さで、物怖じもせずハキハキと話してくれました。高校卒業後は、学業を修めるために一年間懸命に働いてお金を貯めて専門学校に入学しました。無駄遣いをせず、「カツカツの状態でやっていたけれど、だんだんお金が足りなくなってきた」。もう、学校を辞めなければならないかとも思ったとき、里親から日本財団の奨学金事業の話を聞いて飛びつくように応募したとのこと。そしてめでたく奨学金を受け取ることができたのです。将来子供の役に立ちたいというI君は、自分が虐待にあって養護施設で過ごしたことのある経験を持ち、「困っている子供のほんとうの心は、自分のような経験を持っているからこそわかるのではないかと思う」と児童教育にかける情熱を語ってくれました。現在、保育士の資格を取るべく学業に励んでいます。

 学費を納めることができずに学業を断念する寸前で、ご寄付を受け取ることができたI君の実力と幸運は賞賛されることでしょう。また、寄付者がご自分の財産のバトンを若人が受け取り将来に活かしてくれることを見届けられたことも、寄付者にとって大きな贈り物になったのではないかと思います。私もその場に臨場して、寄付者の温かい微笑みとそれを受ける若人の真摯な眼差しを傍で拝見して、この仕事をしていてよかったと思えるほどの感動を致しました。寄付者とそれを受ける受遺者の相互の「よかった」の思いがまさに一致した時でした。

 こうして、寄付者の方からのバトンを受け、I君はこれからあまりお金の心配をすることなく学業に専念できることでしょう。帰り際に食べ物の好みを聞いたら、「ブリの照り焼きが好きです」と答えた礼儀正しい若者の後ろ姿を駅で見送りながら、今は会えないお母さんへの追憶の味なのかしら、とふと思いました。

 これからも、日本財団がご寄付の再分配役としてお役に立てるよう頑張りたいと思います。

2017年06月2日

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